ただ一人の男に ページ45
「ハァハァ...ッ！」
撮影用の衣装を着たまま
必死に駅前の不動産屋を目指した
「ハァ...も、ダメだ...！」
冬物のニットは
全力疾走するには暑すぎて
バッ...！
途中で脱ぎ捨てた
「ハァハァッ...」
僕は本当にどうしようもないヤツだ
いつもいつも甘えてばかりで
傷付けて
誰より知ってるはずの
Aさんの優しさに気付く事もできなくて
「ハァハァ...ッ、この靴...」
走りづらい
僕はサイズの合ってない靴も途中で脱ぎ捨てた
「ハァハァ...」
再び走り出す
ごめんね、Aさん
Aさんはこんな気持ちだったんだね
お手伝いさんだから
当たり前の事だと思っていた
でも、全然当たり前なんかじゃない
好きな人が、ひとつ屋根の下で
自分以外の異性と一緒に過ごす事が
こんなに不安で
堪らない気持ちになるなんて
「ハァハァッ...！」
「...ねぇ、今走ってったの
モデルのチャンミンじゃない？」
「え？...ホントだ！」
どうして僕はいつも
当たり前になってしまうんだろう
Aさんが側にいてくれる事は
全然当たり前なんかじゃないのに
Aさんに愛される事も
全然当たり前なんかじゃないのに
憎んでもいい、嫌われてもいいなんて
そんなの嘘だ
僕はいつだって
Aさんから愛される
ただ一人の男になりたい
「ハァハァッ...！」
「ねぇ、ちょっと危なくない？
信号赤だけど...」
ごめんねAさん
どうか
「「あッ...！！」」
どうか間に合って...！
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作者名：ami
| 作成日時：2014年9月25日 15時
