そんなの知らない ページ43
「もしもし？みな？今、チャンミンと別れた。
うん...やっぱり仕事前にしてよかった。泣きながら仕事なんてできないもんね。
言いたい事、ほとんど言えなかったけど、いいよね...笑ってありがとうって言えたから」
Aさんがどんな気持ちで僕に別れを告げたのか
ずっと側でAさんを見ていたはずなのに
そんな事にも気付けない僕は
自分はついに愛想を尽かされたんだと
そう思った
「ねぇ、シム君...言おうかどうしようか迷ったんだけど、そのTシャツ明らかに裏表だよね...？」
午前中の講義を終えた教室
僕の席まで来た一之瀬さんがそう言った
「え...」
みると、服の横についたタグが
ピラピラと思いっきりその存在を主張していた
「ホントだ...」
バッ...！
「...えっ？
ちょっ、なにやってるの！？」
教室でいきなり裸になった僕に
一之瀬さんが慌てている
「何って、裏表だから着替えないと」
「...ねぇ、大丈夫？」
「なにが？」
「シム君、最近そんなのばっかだよ？」
「...そうだっけ」
「そうだよ、皆心配してる。
この間なんてマフラーしてきたよね？この暑いのに」
「...そうだった？」
「そうだよ。
大学も休みがちだし、単位は・・・」
「あっ！今何時？」
「えっ？」
「バイト行かなきゃ！」
そう言って教室を飛び出した僕に
「午後の講義はどうするのー！」
一之瀬さんが叫んだ
そんなの知らない
今の僕にはバイトの方が大事だから
Aさんとの結婚資金を貯める為に始めた
モデルのバイト
お金を貯めて、結婚するんだ
Aさんと
「ん？チャンミン君また痩せた？」
撮影前の控え室
僕を見たメイクのanさんがそう言った
「そうですか？」
「うん、ちゃんと食べてる？」
「・・・・」
相変わらず食欲なんてない
「ダメよ、食べなきゃ。
体壊したらなんにもならない。貯めるんでしょ？お金」
うりゅっ...
「...うん」
「そんな顔しない！そんな顔してると私みたいに泣き顔が大好物なおばさんはもっと泣けーって苛めたくなるんだから(笑)」
「...はい」
「それと、口うるさいようだけど大学もちゃんと行かないと」
「...はい」
「よし！終わり(笑)」
僕の肩に手を置いたanさんが
仕上がりに満足そうに笑った時
RRR...
目の前の、乱雑に置かれたメイク道具に埋もれた
僕のケータイが鳴った
誰だろう...
着信を確認すると
ユウちゃん
珍しい、何だろう...
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作者名：ami
| 作成日時：2014年9月25日 15時
