実際は ページ42
Aさんが退院して今日で一週間
「なぁ、お前いつまで家に入り浸るつもりだよ」
僕は隼人の家にお世話になっていた
「あらぁ、何言ってんの隼人。
チャンミン君ならいつまでだってOKよ」
「すみません...」
「はぁ、まったく...
オフクロも甘いのかよ、コイツに」
「チャンミン君、おかわりは？」
「いえ...大丈夫です」
「そう？またぁ？昔は気持ちいいくらい食べてたのに...全然食べてくれないからおばさんつまんない」
「...(笑)」
食欲なんてない
Aさんと会えないのに食欲なんて...
Aさん...
「あらやだチャンミン君、お腹でも痛いの？」
「何言ってんだよ。
どこの世界に腹が痛くて泣く大学生がいるんだよ」
「そう？じゃあ何で泣いてんの」
「それは...はぁ...
チャンミン、お前風呂入って来いよ」
母親とのやり取りに疲れたのか
半ば投げやりにそう言った隼人に言われるまま
僕はお風呂に入る事にした
「うん...」
隼人には申し訳ないけど
一人でいたら
時間の感覚すらおかしくなりそうだった
「はぁ...」
着替えを取りに部屋に入ると
RRR...
ジーパンのポケットに入れていたケータイが鳴った
すぐに着信を確認する
ディスプレイには
Aさん
待ち望んだ愛しい人の名前
すぐに電話に出た
「もしもしっ！」
「あっ、チャンミン...今平気？」
一週間ぶりに聞くAさんの声
涙が出そう
「...うんっ」
違う、もう出てる
「明日学校休みでしょ...？
仕事の前に会って話がしたいの」
「うんっ...」
「じゃあ、9時にCasaで」
「うんっ...」
Aさんに会える...！
嬉しくて胸がいっぱいで
「うん」しか言えなかった電話なんて初めて
ちゃんと謝って許して貰うんだ
いつもAさんの優しさに甘えていた僕
今回もちゃんと謝って本当の事を話せば
許して貰えるものだと思っていた
でも実際は...
「私なりに考えた。
私達、もう別れよう？」
...え？
「今までありがとう、チャンミン(笑)」
Aさんが僕を真っ直ぐ見つめて
笑顔で...そんな事を言うから
何一つ伝える事なんてできなかった
「じゃあ、仕事だから行くね」
...どうして？Aさん
まだ僕謝ってもいないよ？
ごめんね...って
傷付けてごめんねって、言おうと思ってたんだ
「A、さん...？」
テーブルの向こう側
やっとの思いで呼び掛けても
返してくれるAさんは
もう、いなかった
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作者名：ami
| 作成日時：2014年9月25日 15時
