私にくれた人 ページ35
シーン...と静まり返った病室で
ポツンと一つだけ置かれたベッドに一人きり
今、何時なんだろう...
痛み止めの薬を飲んだから
眠くなってもよさそうなのに一向にそうならない
目の前に広がる真っ白な天井を見つめても
ぎゅっと思いきり目を閉じてみても
浮かんでくるのは、アイツの顔
さっき目にした、ドアの隙間から
泣きそうな顔でこっちを見つめていた
アイツの顔
どうしてあんな顔するの...？
罪悪感なんて感じなくていいのに
変わらない気持ちなんてどこにもないって
わかっていたはずなのに
恋人の心変わりを認めたくない往生際の悪い女が
一人で勝手に階段から落ちただけだから
だからあんな顔をされたら
余計、惨めになるだけ
「...ッ」
わかってるから
チャンミンの気持ちは
だけど、もう少しだけ時間が欲しい
ちゃんと気持ちの整理をつけて
「今までありがとう」って
笑顔でさよならしたいから
だってチャンミンは
今まで数えきれない程の幸せを
私にくれた人でしょう...？
「...ぅっ」
だからもう少しだけ待っててね
チャンミン...
明け方、泣き疲れてようやく眠りについた私は
夢を見た
サイレンの音が微かに聞こえる救急車の中
溢れる涙が邪魔なのか
何度も何度も片手で顔を拭っては
必死に私の顔を覗き込むアイツがいた
ふと見ると
アイツの顔のすぐ横で握られた私の左手が
カタカタ、カタカタ...
震えるアイツの左手と一緒に
カタカタ、カタカタ...
あり得ないくらい、震えていた
全身痛くて堪らないはずなのに
「...ッ、Aさん！」
何度も何度も涙を拭うアイツが
カタカタ、カタカタ...
つられて一緒に震える左手が
嬉しくて幸せで
夢の中の私は、泣きながら幸せそうに
笑ってた
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作者名：ami
| 作成日時：2014年9月25日 15時
