これでもまだ ページ29
「上手く...貼れない」
いつも持ち歩いている
柄の入った、お気に入りの絆創膏
手の震えがなかなか収まらなくて
上手く貼れずにモタモタしていたらアイツが来た
「大丈夫ですか？Aさん...」
リビングにある自分の鞄の前に跪く私の後ろから
アイツがゆっくり近付いてくる気配
ダメ...
今アイツの顔を見たら、きっと泣いちゃう
だから...
「うん、大丈夫...。
あっ、トイレ...借りていい？」
そう言って逃げるようにトイレに向かった
「はぁ...
けっこう深く、やっちゃったな...」
トイレの壁に寄りかかり
ドクドクと脈打つ人差し指を見る
不器用に巻かれた絆創膏が
みるみるうちに赤々と血で滲んでいく
熱を持ち、痛いはずなのに
まるで痛みを感じない
キリキリ、キリキリ...
それ以上に
胸が痛くて痛くて堪らないから
「・・・・」
やっぱりダメだ
今日はもう帰ろう...
お腹が痛いとかなんとか言って
ガチャ...
そう決めてトイレのドアを開けた私の耳に
飛び込んで来たのは
「可愛いですね、Aさんは(笑)」
とても聞き覚えのある、甘い言葉
どう...して？
「ホントに可愛い(笑)」
チャンミン...
「もう、すぐそうやってからかうんだから！」
すぐって...
いつも...言ってるの？
ドクンッ、ドクンッ...
激しく体中に響き渡る、胸の音
「からかってなんかないですよ？
ホントにそう思うんです(笑)」
ねぇ、チャンミン...
これでもまだ...
これでもまだ私は
愚か者、なのかな
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作者名：ami
| 作成日時：2014年9月25日 15時
