カウンターの向こう側 ページ24
「ふふっ、世間は狭いなぁ(笑)」
「ホントですね(笑)」
「・・・・」
そうだよ...
あの日、アイツの態度はどこかおかしかった
あれは一体、何だったんだろう
でも知り合いなんかじゃなさそうだし
単なる...気のせい？
「・・・・」
「どうしたの？Aさん。
そんな所に立ってないでこっちに来て下さい」
アイツがたった今腰を下ろしたダイニングから
手招きをした
「う、うん...」
「もうすぐ出来るから(笑)」
カウンターキッチンの向こうから
富永さんが私達に声を掛ける
何だか変な感じ...
家庭がある榊さんは
昼間の内に全て終らせて帰っちゃうから
ほとんど顔を合わせる事はなかったし
こんな風に食事を作ってくれるのを
大人しく待ってる事なんてなかった
でもアイツは慣れっこなのか
「ふふっ(笑)
楽しみだな、冷麺」
頬杖をつき、キッチンの方を見ながら
ご機嫌な様子
「ん？これでいいのかな？...ブツブツ」
味が気になるのか
富永さんが冷麺にかけるタレを味見しては
ブツブツ独り言を言っている
どれどれ...？
そう思って立ち上がろうとしたら
「ふふっ(笑)
僕が味見しますよ」
先に立ち上がったアイツがそう言いながら
キッチンへ入っていった
「これなんだけど...」
富永さんに渡されたスプーンで
早速味見をするアイツ
「う〜ん...
もうちょっと甘味があった方がいいかな」
「そうなんだ〜。
じゃあ、お砂糖...と」
背の高いアイツと
アイツの肩にも届かない程小柄な富永さん
そんな二人が
キッチンで寄り添うように並んでいる
「あっ！入れすぎちゃった！」
「どれどれ・・・あっ、ホントだ」
「どうしよう、もうやだ...
さっきから失敗ばっかり...」
おっちょこちょいな性格なのか
そう言って落ち込む富永さんを
「大丈夫ですよ。
他の調味料ももう一度足し直せばいいんだから(笑)」
アイツが優しく気遣っている
「・・・・」
これからこの二人は
しばらく毎日こうやって過ごしていくんだ...
モヤモヤと
言い様のない不安が押し寄せてくる中
「あっ、それじゃあ入れすぎです」
「えっ...そ、そっか...」
カウンターの向こう側にいる二人を
ただ呆然と眺めていた
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作者名：ami
| 作成日時：2014年9月25日 15時
