「一之瀬繭」 ページ14
教室に着き、まだ時間もあるので
いつものように
持ってきた本を読もうとした時だった
「シム君、おはよう(笑)」
突然僕に声を掛け
席の横を通り過ぎる人がいた
瞬間
ふわっと香る甘い香り
誰だろう？
気になって振り返ると
「おい、お前！
一之瀬と知り合いなのか！」
僕の後ろに座る杉本
話し掛けてきた
出席番号が後ろだから
名前と顔は一致しているけど
話すのは今日が初めて
「いや、知り合いじゃない」
「え、そうなの？
なんだ、あの一之瀬が話しかけるから俺はてっきり・・・」
「あの一之瀬...？」
杉本の言い方が気になって
話途中の彼の言葉を遮り聞いてみた
それに一瞬
キョトンとした表情を浮かべた杉本は
「なに？お前知らないの？」
そう言って彼女の事を説明し始めた
少しだけ鼻息荒く話す杉本曰く
どうやら彼女「一之瀬繭」という人は
美人で帰国子女で、その上上品で
この大学に入学した時から
「男達の注目の的」の女性らしい
そんな彼女が自ら僕に声を掛けたから
気になったと言うわけだ
ふ〜ん、注目の女性か
「なんだよ、知り合いじゃないのかよ。
でも待てよ？知り合いじゃないって事は・・・」
ブツブツと呟く杉本を横目に
後ろの席に座る彼女を見ると
友達と楽しそうに笑っていた
杉本の言う通り
「一之瀬さん」は清楚な感じの美人だった
その時、不意に前を向いた彼女と視線がぶつかり
彼女がニッコリ笑い掛けてきた
確かに綺麗だ
だけど、フィッ...
別に彼女に興味もない僕は
その視線を広げた本に戻した
「もしかして一之瀬
シムの事が...好き？」
いつものように本を読み始めた僕の後ろで
そう呟く杉本の声が聞こえた
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作者名：ami
| 作成日時：2014年2月1日 23時
