色のない瞳 ページ7
その日は一日中落ち着かなかった
早く家に帰って
アイツの喜ぶ顔が見たかった
早く...早く...
時計ばかり気になった
「お先に失礼しまーす！」
ついに終業時間になり
残業で遅くなるアイツより一足早く
ホテルを後にした
「ただいま〜！」
急いで家に帰ると
「おかえり〜」
幸哉がリビングのソファで
テレビを見ながら寛いでいた
その横にポン！と鞄を投げるように置いて
急いでキッチンに向かう
...え
「何、これ...」
そこで私は言葉を失った
なぜって、茹で上がったばかりのジャガイモが
大量に置いてあったから
「あ〜それ？なんか急にコロッケが食べたくなって。Aに作って貰おうと思って茹でといた」
それを聞いて
慌ててジャガイモが入っていた箱を確認した
「...これじゃあ作れない」
箱の中は空っぽだった
肉じゃが用のジャガイモを
新たに買いに行く事も考えたけど
すでに茹でてあるジャガイモを無駄にする事も
幸哉の気持ちを無視する事も出来ずに
仕方なくコロッケを作り始めた
その様子を、時折キッチンに来ては
嬉しそうに眺めていく幸哉
はぁ...
「あとはマカロニサラダでも作るか...」
ちょうどコロッケを揚げ終わった時
ケータイにあやから電話が掛かってきた
内容は仕事の連絡事項で
大した事なかったんだけど
「今夜は肉じゃがなんだって？
シムが嬉しそうに言ってたよ〜(笑)」
電話を切る直前
からかう様に言われた台詞に再び言葉を失った
「・・・・」
時計を確認すると
「急げば間に合うかも...」
よし...！
やっぱりジャガイモ買ってこよ
「ただいま〜(笑)」
その時、タイミング悪く
玄関からアイツのご機嫌な声が聞こえてきた
え、帰って来た？早くない？
「ただいま〜、Aさ〜ん(笑)」
そのままにこにこしながら
キッチンまでやって来たアイツ
「えっ...」
揚げたてのコロッケを見て
固まってしまった
どうしよう...
「あ、おかえりなさいチャンミンさん
今夜は俺のリクエストのコロッケですよ〜」
すると事情を知らない幸哉が
ソファに座ったまま陽気な声でそう言った
「・・・・」
呆然と立ち尽くすアイツ
色のない瞳
そのなんとも言えない表情に
堪らなく胸が締め付けられた
「...ッチャンミン！」
言い訳がましいけど
「聞いてくれ・・・」
「手、洗ってきますね」
アイツは私の言葉を遮り
それだけ言ってキッチンを出ていった
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作者名：ami
| 作成日時：2013年8月7日 12時
