忘れられない人... ページ27
20分くらい車を走らせ着いたのは
一見民家にも見えるような小さなお店
「小さな店だから
すぐ駐車場が一杯になっちゃうんだ」
幸哉の言っていた通り駐車場は既に一杯で
近くのコインパーキングに車を停めて
歩いて行く事にした
「小さいけど味がすっごくいいんだ。
隠れた名店だね」
大通りに面した道を
幸哉の話を聞きながら歩いていると
「あれ？幸哉...？」
すれ違い様に女性に声を掛けられた
綺麗なロングヘアーに透き通るような白い肌
シンプルなワンピースを着たその女性は
かなりの美人
「沙耶...」
幸哉の様子から
彼女が「忘れられない人」である事が
すぐにわかった
「沙耶？誰？」
一緒にいた女性が呟いた
「あっ、前に・・・」
そう言いかけて彼女の顔付きが変わった
「えっ、もしかしてモデルのチャンミン！？
やだ！どうしてこんな所に？」
「え、ホントに！？」
アイツに気付いた二人
キャアキャア言いながら
チラチラとアイツに目をやった
「ちょっと幸哉！
どうして一緒にいるの？」
幸哉の腕を掴んで興奮気味の彼女
そんな彼女に戸惑いながらも返事をする幸哉
「あ、今...チャンミンさんの家にお世話になってるから」
「え？知り合いだったの？」
それを聞いた彼女は
次の瞬間、信じられない事を口にした
「そうと知ってたら幸哉と別れなかったのに！」
「え...」
幸哉の顔がみるみる青ざめていくのがわかる
にも拘わらず興奮気味の彼女は
自分の言った事にも気付いてないのか
「チャンミンさん、はじめまして！
幸哉の友達の藤井沙耶です」
満面の笑みでアイツに自己紹介をした
しかも呆然と佇む幸哉に
「もしかしてこれから食事？
私達も一緒にいい？」
あろうことかそんな事まで口にする始末
あまりにもひどい態度に我慢できなくて
口を開いた瞬間
「ちょっ・・・」
「イヤです」
隣にいるアイツがはっきりそう言った
「え...？」
「聞こえなかったんですか？
"イヤだ"と言ったんです」
「...イヤ？」
アイツの言葉が信じられないのか
薄ら笑いを浮かべる彼女
「はい。あなたのような人と一緒に食べたら
ご飯が不味くなります」
「・・・・」
言葉を失う彼女に
冷たい視線を投げ掛けたアイツは
「そういう事なんで、失礼します」
吐き捨てるようにそう言い
「行きましょう」
ズンズン歩き出した
「...行こ？」
私は呆然と佇む幸哉の手を引いて
アイツの後を追いかけた
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作者名：ami
| 作成日時：2013年8月7日 12時
