僕は嘘はつかない ページ29
「大丈夫...幸哉君を心から愛してくれる人は絶対いるから」
隣に座る私の顔を見て
アイツがふわっと笑った
「僕がAさんに出会って辛い思い出を乗り越えられたように、幸哉君もいつかきっとそんな人と出会えるから...」
幸哉の頭を
ポンポンと優しく撫でるアイツ
「チャンミン...」
それを聞いてゆっくり顔を上げた幸哉は
涙でグシャグシャになった顔でアイツを見た
「ホントですか...？」
「ホントだよ？
前にも言ったけど、僕は嘘はつかないよ(笑)」
優しい笑顔を向けるアイツに
更にボロボロと大粒の涙を流す幸哉
「幸哉...」
そんな二人を見て思わず涙が零れた
「どうしてAさんまで泣くんですか！」
それに気付いたアイツが
困ったように笑って、涙を拭ってくれた
「チャンミン...」
幸哉の前で見つめ合う私達
「羨ましい...」
すると幸哉がボソッと呟いた
「俺も幸せになりたい...」
あれ、幸哉？
なんだか目が...ヤバイ？
「いつか幸哉君もなれるよ」
アイツは気付いてないのかな
「イヤだ...今すぐなりたい」
「え？」
目が、ほら...
据わってない？
「チャンミンさん...」
「なに？」
やっぱり完全に据わってる
「今すぐ幸せになりたいんだ...
だからAを俺にちょーだい？」
「Aさんを！？」
しかし幸哉の言葉に平静を失ったアイツは
そんな事に気付く事なく
「ダメだ！！」
大声でそう叫ぶと
私を力一杯腕に抱え込んだ
「ちょーだい！」
「ダメだ！」
「ねぇ...」
「ちょーだい！」
「絶対ダメ！」
「ちょっと...」
「ちょーだい！」
「ぜぇーったい、ダメッ！！」
「・・・・」
まるで子供がオモチャを取り合うような
下らないやり取りは
コンコン、ガラッ...！
「もうすぐラストオーダーで〜す！(笑)」
店員さんが来るまで延々と続けられた
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作者名：ami
| 作成日時：2013年8月7日 12時
