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我こそは影 ページ10
誰も言葉を紡がない。
否
紡“げ”ないと言った方が正しいだろう。
熱砂の国特有の衣装を身に纏い
小振りながらも煌びやかな宝石、装飾品を身に付け
澄みきった泉のような歌声を響かせ
彼女の心の如く燃ゆる焔を想わせるような
彼女の湖畔のような静けさを想わせるような
彼女の雪のような儚さと冷たさを想わせるような
そんな舞に彼らは見惚れ、酔いしれていた
薄く透ける布がふわりと風を孕み
宝石は月光に照らされ淡い光を放ち
艶やかな美貌に小さくも笑顔の花を咲かせながら舞い、歌う彼女の姿に
美しく奏で、紡がれる詞の数々
それらを決して聞き逃すまいと必死に耳をすませる
黄金の瞳は月のように
絹のような髪は風に舞い散る砂のように朧気に
オアシスを気紛れに襲う竜巻のように
彼女の髪を揺らす風はころころと其の表情を変えていた
儚げで
無邪気で
妖艶で
どこか哀しげな表情
彼女の体は此処に在りしも
魂は此処に在らず
同じ月のもとで
どこまでも続くであろう空の下で
静かに彼女は想いを馳せる
たとえ隣にいることを禁じられても
どうか想うことだけは赦してくれと言わんばかりに
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作者名：奈雪 | 作成日時：2020年9月28日 20時
