紅一点は密かに愛される。に。 (ページ35)

今日:19 hit、昨日:1 hit、合計:218,382 hit

　ページ35

　
　
「、____っ、」

「黙って、」

「まって、ここじゃやだ、」

ベッド行きたいって潤んだ瞳でおねだりされて。

それを聞き入れる余裕なんてないのに。

やっぱりどこかで外しきれないネジかなんかがあるんだろう。

「先にベッド入っといて、
一回シャワー浴びてからいくから、」

なんとも下手くそな言い訳は、

酔ったAにしか通用しなくて。

早く来てねと触れるだけのキスをして

出て行った後ろ姿に、小さく息を吐いた。

そこから二時間、シャワーも浴びず

ソファでこれでもかってくらい

時間をおいて戻った寝室では、

待ちきれないAが予想通り寝息を立てていて。

そのほっぺたには涙の筋ができていた。

キスだけの関係を求めたのはAだった

その先には進まない、進めない、

それはAが不安定なときに

安心を求めるだけの行為だったはずなのに。

それを反故してまで求めたそれは

きっと俺じゃなくてもよかったはず。

情けなくて、悲しくて、寂しくて

強がって拒否ったことが正解かは分からないけど。

酔った勢いなんかじゃなくて

本気で求めて欲しいと思うことは叶わないことなの？

きっとなんにも覚えてないAは、明日の朝

起きたらいつものかわいい顔で残酷な笑顔を向けるんだ。

(Aは知らない
腕の中に閉じ込めた寝顔が愛しくて
泣きたくもないのに涙が出ることを)
　
　
　