グラサンが60 ページ21
NO視点
Aは最早やることがわからなくなり、樋口にちょっかいをかけ始めた。
『“わからない”ってことは君より上の立場の人しかわからないわけだ。つまり君はそんなにお偉いさんではない…と。』
Aは稀にこうして人の地雷を踏み抜いたりする。
「なんなんですか貴方!」
樋口は既にAが面倒臭い事を察したのだろう。黒く光る拳銃を素早く構え、Aの額に焦点を合わせた。
『なんかここジメジメしてるね。もうちょっと換気した方がいいんじゃない?』
樋口は一歩ずつ後退りをする。
Aが一歩踏み出すと芥川の黒い衣が目の前の空間を切り裂いた。
『えっ何?流れ弾?こわ…。ね、見た?今の。君の上司怖いね』
Aは目を丸くして驚いた後、ロッカールームの出入口に目を向けるが話しかけた相手は既に居なかった。
Aは数秒固まった。そして上を向いて、下を向いて、出入口を見た。
『よし!』
公園へ遊びに行くような軽いノリで芥川と鏡花の戦場に足を踏み入れた。
下は更にジメジメしていて変な病気にでもかかりそうな空気だった。
刀と刀がぶつかるような音の方に注意を向ける。芥川の黒い背中が見える。その瞬間、芥川の向こうで鏡花の異能が羅生門に拘束される。
Aは走って、隠密だの敗北だの長々と話している芥川の背中にキックした。
と思ったが音がよく響くこの戦場ではAの足音が聞こえていたらしい。
Aは羅生門で脚を掴まれ、穴から上の階に投げられる。
上への力の後、重力が襲う。
ギリギリ反応したAは穴の淵に手を掛けた。
『はぁ…』
言葉に表すことのできない虚しさが胸一杯に広がる。
ヒンヤリしているロッカールームに戻ってきた。
すると鏡花が自力で上の階に戻ってきた…が少し寂しそうな顔をして下を覗いた。だが直ぐに頭を引っ込め、Aの服の裾を引っ張った。
「戻ろう」
Aは、やや疲れた顔をして探偵社に戻ってきた。
与謝野や谷崎、賢治はA達よりも早く探偵社についたようだ。
鏡花は芥川との戦いで負った傷の手当てを与謝野から受ける。手当てをされながら鏡花は先刻のAの様子を話した。
与謝野はいつものソファに座って俯きながら頭を抱えているているAに声をかけた。
「アンタいつも以上にポンコツだねェ。転職したらどうだイ?」
その言葉は慰めるわけではなくAに追い打ちをかけたようだ。
『…検討します。』
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三原色 - 。さん» なななんと!ありがとうございます!これからも何となくで頑張って参りますので何卒…生暖かい目でよろしくお願い致します! (7月1日 17時) (レス) @page10 id: 3ea33a02c4 (このIDを非表示/違反報告)
。 - とっても面白いですね!応援してます (7月1日 11時) (レス) @page10 id: 26c600857a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:三原色 | 作成日時:2023年5月31日 21時