【d】pure Liebe 【ra運営】 (ページ26)

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『………習慣というものは簡単には変えられないですよ。…では。』

そう言い、自室に向かった彼の後ろで、執事は悲しそうな顔を浮かべるだけだった。

シュルケ・Aは生まれつき黒髪で瞳も黒色だった。

父親が青髪で黄色の目、母親が茶髪で緑色の目、そんな間に産まれてきた子供が黒髪黒目。

不思議がられていた。

不思議がられていただけだったのだ。

彼が2歳になって暫くした時、国王から信じられない知らせが伝えられた。

「近い未来に憎き魔王が復活する」

神話伝説に載っている憎き魔王。

この世を全て闇へと変えた、と比喩される程の強い魔力を持つ魔物。

その知らせはあっという間に国中に広がり、何時しか「闇属性の魔法を使う者は魔王の生まれ変わりだ。」「黒髪黒目の人間は魔王の配下だ。」と根拠もない噂が飛び回った。

正しい知識や情報を正確に伝わる事が出来ない時代、国民はその巫山戯た噂を簡単に信じてしまった。

シュルケ家の皆も、例外ではなかった。

使用人は今まで世話していた赤ん坊を気味悪がり、まともな世話をしなくなった。

髪色、瞳の色は違えど可愛い私達の息子だと言っていたシュルケ侯爵夫妻も、息子を亡き者と変わらない対応をしだした。

そういった非道的な扱いは、彼が都市外の屋敷へ追い出されるまで続いた。

根拠の無い噂に踊らされる、それが貴族というものなのだ。

彼が都市外の屋敷へ移り、誰も使わなくなった部屋を執事が掃除していると、机の奥深くに分厚い本のようなものが置かれていた。

執事は静かにそれを手に取り、ページをゆっくり捲り始めた。

それは、シュルケ・Aが酷く扱われる前までの成長の過程が書かれた古い記録帳だった。

何故こんな物がここに、と疑問に思いながら捲っていくと、3分の1過ぎたあたりで白紙が広がった。

もう終わったのか、意外と早いのだな、と思いながらもう1ページ捲ると、途端に執事の眉間にシワが寄せられた。

子供が書いたと推測できる、拙い文字。

子供が書いたとは思えない、とても酷い内容。

その文字はページを捲る度に難しい文字、達筆な字へと変わっていった。

だが内容は良くなるどころか酷くなる一方、執事は初めて自分達の犯した罪に気付いた。

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