【d】pure Liebe 【ra運営】 (ページ25)

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久々の家に足を踏み入れる。

当然、出迎えてくれる人は居ない。

長く居なかったからか、心做しか前よりもシャンデリアが煌びやかになっている気がする。

「A様、侯爵様がお呼びです、荷物を自室へ置いて応接室においでください。」

『侯爵様が？…………分かった。すぐ行くって伝えといて下さい。』

「畏まりました。それと………………」

『？どうしました？』

何かを伝えたそうな顔をしながら、口をパクパク開けてずっと手をろくろ回ししている。

いつもなら目も合わせず、すぐ父の元へ戻るのに………。

「……今までのご無礼をお許し下さい、謝って済む話では無いのは分かっております。許される気も有りません。使用人一同、本当に反省しています。」

「私達はシュルケ家に仕える身です、私達になんぞ敬語を使わないで下さい。」

『えっ…』

……まさか頭が下げられるとは思わなかった。

胸の奥がチクチクする。

俺が離れていた間、何が起こったのだろうか。

いつも執事さんは冷めた目で要件だけ伝えて、こちらと必要最低限の会話しかしようとしないのに。

迎えに来てくれた時も嫌そうなオーラがビンビン感じられたのに。

……幼少期から酷い扱いを受けて、今更許せだって？

俺が、俺なんかが許せるわけないじゃないか。

…………どうせならA本人が身体に残っている状態で謝って欲しかった。

『………習慣というものは簡単には変えられないですよ。…では。』

それだけ言い放ち、自室へ足を運んだ。

………自分がこの世界に来る前から存在していた日記をあなた達は知らないだろう。

とても、とてもAは苦しんでいたんだぞ。

俺が無意識にしてしまうくらい、体に染み付いてしまった癖も分からないだろうに。

『………Aがあの人達を許しても、俺が許せねぇよ。』

仲良くしてくれる友人が居たとしても、家ではずっと1人で耐えてたんだ。

そんなに辛抱強く頑張れた人の意見を無視して軽い気持ちで「いいよ」なんて、自分自身が許せない。

………胸の奥が温かくなった。

…俺だけは一生お前の味方だから、絶対、代わりにお前の幸せを掴んでやるから。