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風が埃を集めていく。
沢山の埃を抱え、そのまま窓の外に飛び出した。
水が窓の汚れを撫でる。
全ての汚れを拭き取り、静かにバケツに戻っていく。
器用に魔法を使い、図書室を掃除する。
長かったここでの生活も、今日でおしまいだと思えば少し寂しくなる。
屋敷の部屋全てを綺麗にして玄関の扉を開ける。
「…………お待ちしておりました、A様。」
『……うん、ごめんなさい。』
父に仕える執事さんが馬車を引いて迎えに来てくれた。
少々嫌そうなオーラが感じられるが、迎えに来てくれた為、文句も何も言えない。
馬車に乗り、ゆっくり目を瞑る。
家に帰るのは、何年ぶりだろうか。
……………本当に長かった。
屋敷にいる間、図書室に篭って勉強をするか、森の奥のダンジョンを攻略するか。
誰とも喋らなかったし、誰からも必要とされなかった。
黙々と勉強をして、黙々とレベルアップを重ねた。
お陰で簡単な魔法なら他属性の魔法も扱うことが出来る。
昔の無知の"自分"は消えたし、転生者としての"自分"も覚悟を決めてゲーム世界の"シュルケ・A"として生きていく決意をした。
家に帰っても数日経てばすぐに学園に入る。
高等部に編入され、学園が管理する寮で生活する予定だ。
………そろそろゲームのストーリーが始まる頃だろうか。
わざわざ自分が悪役として生きていく必要も無い、自由気ままに生きていこう。
主人公が盾突いてくるのならば自分も然るべき対処をするだけだ。
悪役として過ごさないが、だからといって主人公に負ける気もない。
屋敷にいる間、ゲームのシュルケ・Aとしてどう生きていくか考えて決めたこと。
せっかく前世とは違う世界に転生したんだ。
思う存分、誰かの為ではなく、自分の為に生きていこうじゃないか。
「着きましたA様。移動をしましょう。」
『………うん、ありがとう。』
どうせなら主役を奪うのもありかもしれないな。
………ま、暫くは平穏に過ごしても許してくれるだろう。
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作者名：ぽむ | 作成日時：2024年3月7日 6時
