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道枝 side.
目が合ってから、何秒経ったんだろう。
中々差し出した本を受け取らない女の人。
今この人がこの本落としたよね…？
『あの、…これ落としましたよね？』
確認の意味も込めて、その本をもう一度差し出してみる。
「あっ、すみません…！ありがとうございます！」
女の人は、大きい目をまん丸にして本を受け取った。
やっぱり顔小さいなぁ。
でもメイクしてる感じはしないし、髪の毛もセットされてない。
「あの、本当にありがとうございました！」
そんなことを考えているうちに、女の人はぺこっとお辞儀をして去ってしまった。
「みっちー、あの女の人昨日もおった人よな？」
『そうやな、』
「相変わらずみっちーは優しいなぁ！」
『いや、人が目の前で落し物したら拾うのは当たり前やろ…、』
長尾がいじっているスマホの中をちらっと見ると、また白石Aちゃんが映っていた。
『なに、またAちゃんのSNSでも更新されたん？』
「そうそう、昨日握手会あったからその時の写真。ポニーテールとか珍しいからめっちゃスクショしたわ(笑)この握手会今月大阪でもあるんよ！」
画面をのぞき込むと、心臓がどくんと跳ねた。
俺が1番に目に付いたのは、Aちゃんの顔でもなくポニーテールでもなく、
爪に施してあるネイルだ。
キラキラした、水色ベースのネイル。
『さっきの人と同じや、』
落とした本を拾って差し出し、それを女の人が受け取った時の光景がフラッシュバックする。
うん、やっぱり確かに同じネイルだった。
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作者名：pomu | 作成日時：2022年7月24日 21時
