あのね、川西先生。 (ページ21)

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拓『今日のAさん、なんか元気そうやね』

私が数学の問題を解いてると

川西先生にそう話しかけられた。

｢…そうですか？｣

拓『おん、最近元気無さそうやったけど復活したみたいで良かったわ』

｢あぁ…多分仲直りしたからだと思います、それ｣

拓『仲直り？』

｢少し幼馴染と距離置いてたんですけど…、仲直りして｣

拓『…そうなんや、今日朝一緒におった子…やんな？』

｢そうですそうです、1組の｣拓『鶴房…汐恩くんやんな』

｢…あ、はいそうです｣

拓『あの子めちゃくちゃかっこいいねんな、背も高いしガタイも良くてさ』

拓『俺が女の子やったらあーゆう子好きになっとると思うわ』

｢そうなんですか？笑｣

｢でも…川西先生…すごくモテてますよね｣

拓『うーんどうなんやろ』

｢…彼女｣

拓『…え？』

｢先生は…彼女とか居ますか？｣

私は先生の目を見てハッキリとそう言った。

少し先生の瞳が揺れるのが分かる。

拓『…俺な』｢秘密…なんでしたっけ、彼女居るかどうか｣

なんて自分から彼女の存在を聞いたものの、

やっぱり先生の口から

彼女居ますなんて言われたら立ち直れないと思った私は

思わず先生の言葉を遮ってしまった。

だけど

拓『彼女…おらんよ』

ハッキリとそう言った先生の瞳は

私を捕らえて離そうとしてくれない。

｢…そう…なんですね｣

拓『俺に…彼女おったらAさんは嫌やった…？』

｢…え？｣

拓『…ごめん、今の忘れて』

お、ここの問題バッチリやん

そう言って私のノートに大きな丸をつける川西先生。

なんで忘れてなんて言うんですか、

なんで話を逸らしたんですか、

聞きたいけど聞けない

今日も川西先生は掴めない。