昼想夜夢【黒×紫】

おめでと ページ4

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今日は何もない日。
いつもなら仕事やらなんやら、
人と会うから直接声かけてもらったり
するんやけどこればっかりは。

朝起きてから何回も確認したスマホ。
メンバーから、友達から、弟から、
先輩後輩から。メッセージはいっぱい
来てたけど、肝心なあいつからはなんもない。



や、この歳になって別に気にしてないんやけど。
でも、寂しい…やん？






「…風呂洗お」





いつもならご飯食べに行ったりして
祝ってもらっててんけどなあ。
とりあえずはやく終わればいいのに、な。





ピンポーン





「…宅配便？」





や、俺ネットでなんも頼んでないし。
いや…またなんか変なボタン押して
頼んでるんかもしれん。

は〜い、と言いながらモニターを見ると、
明らか宅配の人じゃない男が立っている。
…もしかして、





「…ヒナ？」

『…あ〜ごめん、』
「や、全然ええけど…まあ入ってきて」
『ん、』




ヒナが立っていた。
ずっと、会いたいと思ってた、ヒナが。

マスクしてメガネして。


なんや、ソワソワして玄関で
ヒナが来るのを待ってた。
しばらくするともう一回ピンポン、て
鳴ったから玄関開けると紙袋片手に
立ってるヒナが俯いて立っていた。




「…どしたん」


『…誕生日、おめでと』
『これ、プレゼント』
『仕事あると思って、プレゼント、
　前に買っといてん』
『…ほな、仕事ないし』
『でも、直接渡したくて』
『フキンシン、言われるやろけど』


『どうしても、会いたくて』




玄関に入ってもまだ俯いてるから、
どうしたん、て声かけたら
俯いたままやけど紙袋差し出して
ペラペラとヒナらしくないこと言い出して。

なに？俺をどうしたいの？

抱きしめたい、ええやろか。





「ありがと」
『ん、じゃ…帰る』
「え、ちょ、もう帰るん？」
『…うん、だってあんま長いこと居たら…』
「……そっか、そやな、」
『…うん、』





折角会えたのに、
会いにきてくれたのに。
キスのひとつもできひんのか。





『…お、れ マスクしてるし』
「…？」
『…ハグくらいなら、できる、で』
「………ふはっ、笑ハグで我慢するわ」
『…ん』





何分ハグしてたんやろ。
なにを話すわけでもなく、ただただ、
抱きしめ合ってた。
俺よりちょっと低いヒナの顔は
ちょうど俺の肩あたりにあって、
抱きしめやすい。





『…またな』
「…ありがとな」
『……ばいばい』




涙目になって出ていくヒナを
次はいつ、抱きしめられるのやろか。

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