昼想夜夢【黒×紫】

問題 ページ20

安田side



「ちゃんしんなにしてんの？」
『ん？台本読んでる』
「いやいや、反対やで？」
『え？……ほんまや』




ニカって笑うちゃんしんの顔は引き攣っていて、明らかに元気がない。
いくら天然や言うても台本反対にして読んでるなんて絶対におかしいもん。

生憎まだ僕とちゃんしん以外のメンバーは誰も来てない。僕が聞くしかないわなぁ。





「どうしたん、なんかあったん？」
『えっ、いやなんもないで？疲れてんのかなぁ！ハハ、』
「えぇ、なんもないことないやろ？」



目泳ぎすぎやもん。
絶対なんもないことないし〜！



『…聞いてくれるぅ？』
「当たり前やん、相談乗るよ？」
『…ありがとぉ』



あんなぁ、と子犬みたいな顔して話し出したと思えば
横ちょが今話題の女優と撮られたとかなんとか。
最近舞台の稽古があって帰り遅いのはええんやけど、
必ず女の人の匂いをつけて帰ってくるらしく。
聞いても誤魔化されて、不安に感じていたところに週刊誌。
そら台本も逆になってまうわな。




『俺、もうあかんわ…』
「ちゃんと聞いたん？」
『聞いてないよ…聞けるわけないやん…』
「あんなに信ちゃんのこと好きやのに…」
『…ほんまに好きか分からんやろ』
「信ちゃん…」



こら、相当弱っとりますな。
横ちょがそんな堂々と浮気するような人じゃないのは俺らが1番知ってるし、
なによりこんな可愛い信ちゃんを放って他の人に行くなんて、
あんなに昔から信ちゃんのこと好きやった横ちょがするわけないやん。




『…もう、なんでもええわ』
「、よくないやろ？」
『ヨコからなんも連絡ないもん』
「まだマネージャーに言われてないだけかも知れんやん！」
『もう集合時間10分前やで？さすがにマネージャーと会うてるやろ』
「せやけど、」
『…すまんな、こんなみっともない姿見せて』



トイレ行ってくるわ、と楽屋を出て行った信ちゃんはさっきまであんなに弱ってたのに
もう仕事の顔になってた。
きっと心は泣いてるし、泣きたいやろう。
けど、あの背中を包み込むのは横ちょじゃないとあかんし
俺はただ見送ることしかできん。

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