復讐の狼

7 F ページ8

ギャーギャーとうるさいカラオケボックスの中、周りの雰囲気とは裏腹に俺は顔をひきつらせながらみんなのノリに無理に合わせる。
それもどんどん辛くなって、トイレに行くと言って部屋を出た。

外の階段に出て夜風に当たりながら項垂れる。

きっと仲良くなる前にさっさと殺した方がいい。

「なんで復讐するなんて言っちゃったかな……」

自分の髪をぐしゃりと掻いた。

「ここに居たんだ」

後ろから声が聞こえて振り返れば赤ずきんがいた。

「ごめんな？いきなり来ちゃって。」
「あ…いや」

男にしては小さめな身長。柔らかそうな栗色の髪。くりっとした黒い目。
よく見れば見るほど記憶の中の赤ずきんと重なった。
……おまけに赤いパーカー。
自分が赤ずきんですって言ってるようなもんだ。

今、ここに俺と赤ずきんの2人きり。

殺してしまうなら今なんだろうか。
この首を掻き切ってしまえば…もう焦燥感を感じることもないだろうか。
情が移る前に、相手の事もよく知らないうちに殺してしまった方が罪悪感も薄くなるだろうか。

この……首を……

「藤ヶ谷？」

首に手が触れる寸前、相手の声で留まった。

「……ここ、ゴミついてた」

何もついてないのにパーカーのフードの所をわざと払うような素振りを見せた後、誤魔化すように相手の頭を撫でた。

「先、戻るね」

ぽかんとする相手を置いてきてそのまま部屋に戻った。

「あれ？ガヤさん、ミツは？」
「暑いから涼んでくるって。」

本当はそんなこと一言も言ってないけど。

絶好のチャンスだった。のにできなかった。
まぁいい。せっかく「友達」になったんだからチャンスは他にもあるはずだ。

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