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今まで胸の奥に仕舞ってきた本音がボロボロと零れてきて、一緒に涙も溢れてきた。
頭の中もぐじゃぐじゃだ。
「どういう…こと…?」
「なんでもない。忘れろ」
目の前の彼はわからないというふうに俺を見てくる。
もうここに居たくなくて服の袖で涙を拭って玄関に走ろうとした。が、腕を引き寄せられて抱きしめられた。
離せともがいても抱きしめる力は強くなるだけだ。
「いい加減にしろ」と声を上げようとした時だった。
「男が好きなんでしょ?それなら俺にすればいいじゃん。」
……何を言ってるんだ…
彼女がいるくせに。どうせ俺の事なんてなんとも思ってないくせに。
ここで俺が「うん」と返事をしたところで、また自分が辛くなるのが目に見えている。
「む…りだよ…」
そう答えると、今まで痛いくらい抱きしめられていた力が弱くなり、そのまま手を離された。
ここを出よう。
終わらせるなら…今のタイミングしかない。
「騒いで悪かったな。俺…もう藤ヶ谷には会わない。今まで家に押しかけたりして悪かったな」
じゃあな。と言って太輔の家を出た。
終わった。
終わらせた。
長かった片思いをやっと終わらせられた。
もう会わない。これでさよなら。
最後なら無理矢理にでもキスとかしとけばよかったかも。なんてふざけた事も考えた。
かっこいい太輔の顔、目に焼き付けとけばよかった…
号泣しながら歩いてる成人男性を、通りがかる人はすごい変な目で見てくるけど…そんなのは気にしない。
今日くらいは思い切り泣かせて欲しい。
気持ちの整理は多分結構時間はかかるけど…太輔のことで泣くのはこれで最後にしたいから。
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作者名:ぽんた | 作成日時:2021年2月21日 2時