【即興】ノリと勢いで書く短編集 (ページ27)

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即興にじゅうろくページ27

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対向車線を走る車の上から、雪が塊となって滑り落ちるのを
僕は何となく眺めていた。

昨晩、真っ暗な上空から、はらはらと細かい雪が降ってくるのを見た時は
もしかしたら結構積もるのじゃないか、といい歳にもなって期待してしまったのだが
そんな事もなく、積雪の度合いも去年と大体同じくらいだった。

朝方は積もっていた雪もすっかり溶けてきていて、
夜中に凍結するのが容易く予想できる。

フロントガラスの上を白い塊が流れ、下の黒いアスファルトに落下する。

電線から落ちてきたらしい雪解けの雫が、僕の乗った車に落ちてきて
目の前のガラスに飛沫と、水滴が流れた痕を作った。

車内にも関わらず、吐いた息が真っ白な靄になって
宙を揺らめき、やがて霧散する。

外で風に晒されているよりも、余程か寒さはましな筈だけれど、
そのはずの此処でこの様相ならば、外は一体どれほど耐え難い寒さなのだろうか。

「こんな日に、遊びに行くのか」

「うん、まぁ。屋内だし」

運転席でハンドルを握る叔父さんが「ふぅん」と煮え切らない反応をした。

「帰りは気をつけろよ、……云うまでもないか」

そう続けた叔父さんに、僕が無言で頷いて、小さな車内は再び沈黙に包まれた。

車の走行音に混じって時折、ぱしゃんと水を跳ねる音がするのは
きっと、アスファルトに張った浅い水溜まりをタイヤが潜るからだろう。

駅前で降ろしてもらって、ありがとう、と短く礼を云う。

彼は「如何ってことない」と云いたげに肩を竦めて、
一方通行の案内に従って去っていった。

何にも遮られることのない、強い北風が容赦なく僕を叩く。

――このまま吹き曝しの処にいたら耳が痛くなりかねない。

いそいそと足早に改札口へ向かう。
定期をかざして、開いたゲートを通ってちょっと行ったところに
数人の友人たちが溜まって話しているのを見つけた。

「ごめん、僕が最後？」

「安心しろ、あと一人１時間遅れの奴がいる」

「だから向こうで落ち合おうって今話してたんだ、
お前も来たし、行くかな」

そう云ってホームに向かう友人たちに続いて行く。
１時間遅れの遅刻常習犯は今日はどんな理由で遅れてきたのだろう、と
僕は少し楽しみだった。