【即興】ノリと勢いで書く短編集 (ページ25)

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即興にじゅうよんページ25

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私は薄暗い地下室にいた。広くはない部屋、むしろ狭いと言った方がいいかもしれない。
その、おおよそ広いとは言い難い部屋には所狭しと本が並んでいる。

四方の壁を上から下まで覆い隠すようにしてそびえる
背の高い、大きな本棚にはびっしりと本が綺麗に揃えられて入れられている。
そこに収まりきらなかったらしい書籍が、今度は床に山と積まれていた。

学校の図書館の受付カウンター。
カウンターによって隔てられた空間の床にある蓋を開けて、
梯子を数段降りたところにこの部屋は―――

『閉架図書室』

はあった。

ギッ、と音を立てて梯子が軋む。

珍しい。
ご来客のようである。

「……あぁ、君か」

読んでいた本を閉じて私は言う。
顔を上げた先にはブレザーを着た温厚そうな顔立ちの黒髪の青年が立っていた。

彼は散々むせた後、眉間にしわを寄せて
「相変わらず埃っぽいですね」
と文句を垂れた。

「そういわれても、窓がないからね。
私も換気したいけどそこを開けておくと、図書委員が活動できない」

「放課じゃなくてもいいじゃないですか…？
……放課後なんて特にここに人は来ないと思いますけど」

顔も雰囲気も大人しくて穏やかそうなのに、この青年の性格はちっとも温厚ではない。
敬語を使ってこそいれど、何の挨拶もなしに文句は言うし、
その声にはちらほら刺々しさが見え隠れしている。

「…それで、一体どんな用事で来たの？」

無視ですか、とボヤく声が聞こえた。
……まぁ…参考程度にはしよう。

「…特に用事はないです。暇だったので」

「……あぁー、…こんなことを聞くのは失礼だけど、友人はいないのか？」

「本当に失礼ですね。いますよ」

彼は答えながら、本の山を避けてこっちへ向かってくる。
その道中、舞った埃にまたむせ返っていた。

一応掃除はしているつもりだが、やはり不十分だったか………
しょうがない、今度、誰か連れてきて一緒にやってもらうとしよう。
力仕事の出来る人がいい。

「…暇だからという理由で来ちゃいけませんか」

「いいや？全くそんなことはない。
ただ、暇だからという理由だけでこの埃っぽいところに
むせ返りながらやってくるから、てっきり語り合える友人の一人もいないのかと」

彼は深くため息をつきながら古い木造りの椅子に腰を下ろした。
本が数冊積まれた机を挟んで私とは真反対の場所だ。

「貴女こそ友人はいないんですか？」

そう問いかけた彼の顔は少し意地悪い笑みを浮かべている。