【即興】ノリと勢いで書く短編集 (ページ24)

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即興にじゅうさんページ24

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外は大にぎわいであった。

それは無論、一昨日から町で行われている、
夏祭りのために、近隣から人々が集まっているからだ。

彼は格子窓から、
わらわらと人の波があちらこちらに動くのを、煙草片手に見下ろしていた。

つい数日前までは、彼にも、
祭りに共に行けるひとがいたのだが、一昨日も昨日も、そして今日も、
彼はひとりで、こうして、窓辺で煙草を吹かしながら眺めていた。

というのは無論、その相手と離別してしまったからである。

その別れ方も、別れるより前も、お世辞にも良いとは云えなかった。

最初のうちは良かったのだ。

互いに良い影響を与えていた、とそう感じられていたのだが、
最近の数ヶ月はそれが嘘のように、
苛立ちと不快感ばかりを感じるようになり、
付き合いが始まった頃のときめきや、恥じらいなんかも、
本当に遠い昔の出来事のように思われたのだった。

いつの頃からか、逢い引きもなくなり、連絡を取ることもめっきり減った。

そのまま流れるようにして、別離の道を選んだ。

――――これでよかったのだ……

と、そう思う反面、別れたことを悔やんでいるのを、
彼はしっかり感じていた。

自分は別れたこと、その決断を
息苦しい関係を終わることができてよかったと清々しく思うと同時に
あれほど息が詰まり居心地の悪い思いをしても、あの人を好きに思い、
そして愛しいと思っていたのに何故、終わらせてしまったのだろう………と
自責の念にも駆られている。

涼しくなるのにつれて人の数が多くなっていく。
そこから目をそらし、紫煙を吐きだして煙草を灰皿に押し付けた。

風の噂によれば、ほんの数日前に別れたばかりだというのに
彼女には既に新しい恋人ができたそうだ。

「……醜女(しこめ)が」

小さく、彼女を卑下する言葉が漏れた。
外の祭りはますます賑わい、中には仲睦まじく歩く男女もあるのに、
室内は冷え冷えした沈黙と重たい空気ばかりが支配して、いよいよ息詰まるのであった。