【即興】ノリと勢いで書く短編集 (ページ23)

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即興にじゅうにページ23

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重く垂れこめた曇天が、
空へと向けてそびえる摩天楼の電光を
鈍く反射している。

鉄橋の上を走る列車の車窓から
私はそれを眺めていた。

列車の中には、私のほかにくたびれた表情の中年男性と
いかにも高そうな洋服に身を包んだ若い女性と、
学生服を着た青年二人が、同じ学校の生徒だろうか
セーラー服の少女を三人連れて、ボックス席に座っている。

私はというと、車両の後ろの方の席に
一緒に来た……まぁ、上司と
四席のボックス席に斜めになって座っていた。

「……綺麗ですね」

ふいに彼がそう云った。

「…そうですね。
とても綺麗です」

何もない荒野を走る祖国の列車では
なかなか見られなかった。

まるで宝石箱のようなキラキラした美しい光景。

――――いや、宝石箱など、見たことはないのだけれど。
きっと、こういう感じなんだろうな…と
漠然と思った。

ビルのひとつひとつから放たれる光が、
また、別のビルの、ガラス窓に反射している。

ひときわ大きく目立つ電波塔のカラフルなイルミネーションの拡散光が
そこへ更に彩りを加えていた。

この都市が繁栄していることを象徴するような
まばゆい光の数々にぼんやりと見惚れてしまう。

ぼぅっと惚けている私の耳に
予想だにしていなかった、唐突な言葉が飛び込んできた。

「―――――――――……綺麗なのは貴女ですよ」

＊

こんなありきたりなやつが書きたかったのではなかったが
何故かこうなっていた不思議。