【即興】ノリと勢いで書く短編集 (ページ18)

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即興じゅうはちページ18

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思い通りにならないなど、そんなのはいつものことだ。

彼女は静かに息を吸って、そして、それをはきながら、暴れださんとする憤怒に支配されかけた自分に、何度か、繰り返して言い聞かせた。

自分自身、なぜ、こうも腹立たしいのか、一体何が、そんなにも自分を怒らせるのか、まったく分からなかった。
原因に心当たりがないわけではない。
理由など、これでもかと言うほどに思い付く。

低下した成績、クラスが抱える問題と、改心の兆しさえ見えぬ悪名名高き同級生、バイト先での、ギクシャクした人間関係……。

例えをあげればきりがなく、そのどれもが、彼女の、強度があるようで実はない薄いA4ファイルのように、あっさり折れて傷物になるような精神を、また、ひどくさいなみ、痛め付けるのだった。

心当たりがないわけではない、むしろその逆で、心当たりがありすぎて、何がきっかけで今に至るのかが、てんで理解できないのだ。

目の前で叱責される同級生は、気まずそうな、後ろめたそうな顔で立っている。

どこか不貞腐れたその態度が、また、苛立ちを加速させた。

「似たことで、もう何度しかられた？
お前は学習をしないのか？」

そんな言葉が脳裏に渦を巻く。

元より、自分が彼を苦手としていたせいかもしれない。彼の一挙手一投足が、我が儘で、奔放で、とても勝手な自分本意に見えて仕方なく、故にそれらすべてが、堪らなく嫌だった。

だから今でさえ、冷たい言葉を投げつけたいと思い、出来ることならば、存在ごとこの空間から抹殺したいと、そう願うのかもしれない。

冷静になろうと取り出した、図書室で借りた江戸川乱歩の小説にも、なかなか集中できない。

目の前の騒音が煩わしい。

きっと明日になれば、いや、早ければ今日、すぐこのあとからでも、彼は「なぜ叱られなければならないんだ」とやかましく吠えるのだろう。

そう考えると、なおさらイライラして、排斥したいと言うこれがまた、随分と傲慢な感情に拍車をかける。

とんでもない悪循環だ。

ぎり、と忌まわしいその彼をねめつけて、チッとかすかな舌打ちを漏らし、彼女はいよいよ、如何にして彼を辞めさせるか、そればかり考えるのであった。