5 ページ5
私は羞恥心に苛まれながら、医務室へと連れていかれた。善法寺先輩は私達が入ってきたことに一瞬の驚きを見せ、直ぐに布団を何枚か用意してくれた。
「ねぇ、A__」
「やめて。何も言わないで。出ていって」
尾浜の心配そうな瞳から目を逸らす。今は顔を合わせられない。
「……すみません、善法寺先輩。あとはお願いします」
悲しさの含まれた声色に気兼ねするけども、家との約束は破れない。まだあの時の少年を見つけていないのに。
尾浜の気配が無くなったのを確認して、善法寺先輩を見る。きっとこの先輩には隠せないだろう。大きな猫目に捕らえられる。喉を上下させ、掛け布団を掴んだ。
「善法寺先輩……僕…いいえ、私は」
「A家の一人娘、A嬢ですね?」
突然恭しくなってしまった彼に準じて、『忍たまの3年生』という仮面を外す。
「…っ、えぇ。知っていたの?」
「少しばかり事情がありまして」
いつものように優しく微笑む彼の顔に、戸惑ってしまう。何だろうか、この違和感は。
「もしかしてだけれど、今4年生が全員いるの?」
「流石ですね」
立花先輩を筆頭に、屋根裏から降りてこられた先輩方は、頭を垂れていた。
「……顔を上げな…、上げてください。やっぱり、今までお世話になってきた先輩方の前では、忍たまの後輩であるAAでいたいです」
「そうか。……A、私たちは学園長先生のご指示で、お前の護衛をしていた」
「私が入学した当初からでしょうか?」
先輩方が頷く。
何となく、護衛がつけられているのは勘づいていた。ただそれが誰なのかは見当もつかなかったし、私自身も探ろうとはしていなかった。まさか1つしか年の変わらない先輩方がしてくれていたなんて。
「……私がこの学園に来た理由は不純なもので、性別を偽って、4年生になるまでその嘘がバレないことを条件に、無理やり入学させてもらいました。私はもう……」
「いや、退学する必要はない」
そう言い放った潮江先輩が、昨日よりも濃い隈を付けた目頭を抑える。
「尾浜には疑念を抱かれているが、……まぁ、アイツだからな。大丈夫だ」
尾浜に対する謎の信頼はどこから来ているんだか。私以外が潮江先輩の言葉に納得しているような雰囲気に、疎外感が生まれる。
「とにかく、今は寝た方がいい。顔色が悪いよ」
「…はい」
……後で尾浜に謝らないと。
37人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ポロ(プロフ) - 忍たまファンさん» ありがとうございます! (2022年9月10日 21時) (レス) id: 1dd39356a5 (このIDを非表示/違反報告)
忍たまファン - 続き頑張ってください!! 応援しています!! (2022年9月9日 18時) (レス) @page3 id: 46824efb5e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ポロ | 作成日時:2022年9月6日 10時