恋が溶けるその前に【今市隆二】 (ページ19)

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「 100点って何！？100点なんか取れるもんなの！？」

「ね～」

興奮してる紗綾と妙に落ち着いてる私。

私の場合、正確に言うと唖然としてる状態。

正直、抜かされることはないと思ってた。

理系は苦手。

今市に数学を教えるくらいは出来るつもりだけど学年一位は滅多に取れない。

物理と生物と化学は去年で無くなった。

文理選択で文系に進んだから。

文系は得意。

凄い出来るわけじゃないけど私のレベルに合ってないこの高校ではぶっちぎりで出来る。

1位以外とったことはない。

ううん。

ーーー取ったことは、なかった。

「直人先生！今市くんってなんであんな英語できるの？」

放課後、英語科の直人先生が担任である2年8組で私たちは直人先生に詰め寄っていた。

さっきも言ったけど主に詰め寄ってるのは紗綾で、私はそばでずっと考え事をしていた。

今市隆二は英語がとにかく出来る。

でも私は今市が英語のテスト勉強をしているところを見ていない。

やってたのは数学とか世界史ばっかだしそれもほとんど勉強してない。

なのに100点だった。

今市が私に見せてきた数学の解答は悲惨なものだったのに。

本人はそれでもかなり満足そうで、Aのおかげだ～、なんて言っていたけど。

しかも100点を取ったくせに自慢してこなかった。

まるで当たり前みたいに。

いや、もしかして。

ーーー英語が出来る理由を探られたくない？

「あれ、お前ら今市が英語できる理由知らないの？」

「え、直人先生知ってんの？」

「あ～、そうか～。お前ら仲良いから知ってんのかと思ってた」

仲良くなんかないし、今市は秘密ばっかり纏ってる。

隠してる。

何もかも、隠してる。

私が聞いても笑顔で交わされる。

でも目が“聞くな”と言っている。

「知らないんなら俺が勝手に言えないな～。
あんま言うな、って言われてるから」

ケチ～、と不貞腐れた紗綾の頭を直人先生は優しく撫でた。

2人は断じて出来てない。

直人先生があーゆう事普通にやっちゃうだけ。

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廊下に出ると臣が1人でぼーっと突っ立っていた。

「あれ、臣どうかした？」

「いや、なんでもねぇ」

そのまま何も言わず臣は廊下の角を曲がってすぐに見えなくなった。

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