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「 俺のことも1つ教えてあげるよ 」
いたずらに笑いながらそう言った。
「 ……なに 」
私だけじゃなくて紗綾も臣も今市の口から出てくる次の言葉に興味津々で、謎に包まれた彼が何者なのか知りたがっていた。
「 俺はね、Aとは会ったことないよ 」
………………え?
「 知ってるよ、そんなのーーー 」
「 でもさ、よく恋愛小説とかには実は過去に主人公とヒロインが会ってた、なんてことあるじゃん 」
確かに。
私も読んだことあるかも。
じゃあ何?今市はあのとき本当に初対面の私に告白したの?
「 俺はAに会ったことなかったけどAのことは知ってた。会う前からAのことが好きだった 」
やっとこのモヤモヤした気持ちとバイバイ出来ると思ったのに、もっと分からなくなった。
今市が口を開けば絡まった糸がさらに絡まっていく。
「 じゃあなんで私のこと知ってたの? 」
「 それは秘密 」
今市はまた笑った。
無邪気に。まるで宝物を隠した子供みたいに。
「 なにそれ、全然なにも教えてくれてないじゃん 」
「 え〜、そうかな〜。俺的には結構なヒントだったんだけど 」
ヒントって、ゲームしてるんじゃないんだから。
これ以上は話にならないと判断した私は、席を立ってキッチンへ向かった。
こんなに遅くなるつもりはなかったのにもう9時を過ぎていて紗綾と臣に悪いことをしたな、と思った。
ーーーー今市のことは知らない。
「 洗い物するから持ってきて〜 」
安くて使い勝手がいいスポンジに洗剤を付けて次々と運ばれてくる食器を洗っていく。
こんな量の食器を洗うのは久しぶり。
「 やっぱりAは奥さんみたい 」
私の手元を覗き込んでそんなことを言うから、
「 茶化さないで 」
私はそうあしらった。
それなのに、
今市はどこに住んでるんだろう。
こんなに遅くなって大丈夫かな。
一瞬だけそう考えてしまって、ううん、私が心配する義理なんてない、と雑念を振り払った。
どうしたって彼は私の“危険人物”なんだから。
このモヤモヤも雑念も一緒に洗い流してしまおう。
私の手の届かないところまで。
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りり(プロフ) - mmlibrab51761014345403183さん» コメントありがとうございます◎楽しんでいただけるよう更新頑張りますね! (2016年7月4日 16時) (レス) id: eb56b9b83e (このIDを非表示/違反報告)
mmlibrab51761014345403183(プロフ) - 初めまして!小説毎回楽しく読ませてもらってます。 (2016年7月4日 8時) (レス) id: 56f79d8620 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:時雨 | 作成日時:2016年6月13日 21時