恋が溶けるその前に【今市隆二】 (ページ13)

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13：フーセンガムページ13

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「ねぇ、A本当に刺身こんにゃくだけにするつもり？」

「そうしてもいいよ？」

私が冷蔵庫の中から刺身こんにゃくを本当に出すから紗綾は心配そうにそんなことを聞いてきた。

「今市の歓迎会なんでしょ？
ちゃんとやるわよ」

「あれ？やる気になってくれた？」

「なるわけないでしょ。

……舐められたくないから」

「ふ～ん？？」

「なに！？」

紗綾はそういう可愛いとこあるよね～、ってニヤニヤニヤニヤ。

やる気にはなってないけどせっかく作る気になったのに、なんでそうやって茶化してくるのか。

私は紗綾のことはスルーして料理を作り始めた。

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テーブルの上に並ぶ耐熱皿。

トマトドリア。

と、刺身こんにゃく。

その他もろもろ。

食べ始めて数分で半分以上無くなってしまった。

「ちょっと、そんな急いで食べたらつかえるよ？」

「あ、ちょっと今奥さんぽかった」

「 ………… 」

なんでこいつはこういういらないことをいうのかな。

私が今市の奥さんになるはずないでしょ。

「ねぇ、Aの親って帰ってこないの？」

今市は急に言ってることがコロコロ変わるから困る。

「 ………帰ってこないよ」

「なんで？仕事？」

「 ………言いたくない」

うるさかった夕飯が急に静かになってしまって私は罪悪感を感じた。

ごめんね、私のせい。

今市は悪気があって聞いたわけじゃないのに、私が上手く交わせないから。

おかしいな、普段ならこんなこと簡単に出来るのに。

「ごめん、変なこと、聞いたかも」

柄にもなく謝ったりするからすぐにでも泣いてしまいそうだった。

紗綾も臣もこちらを心配そうに見ているのが分かる。

家に入れた時点でこうなることは予想できた。

紗綾も臣も知ってるんだから。

今市のことは嫌いだけど今市なら他人に言いふらしたりはしないと、

直感でそう思った。

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