恋が溶けるその前に【今市隆二】 (ページ2)

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月曜日の放課後。

綺麗に並べられた机と綺麗に消された黒板。

こんなに教室が綺麗なのは、多分今日の日直だったのが真面目な学級委員の女の子だったからだ。

「結局英語は教えてくれないわけ？」

その綺麗な机に並んで座る女子高生2人。

私と、親友の武内紗綾(さや)。

栗色のロングヘアはおろしているかお団子にしているかのどっちか。

ちなみに今日はお団子。

「 Aさ、頭いいくせにこの高校に入ってきた嫌味系女子なんだから勉強くらい教えてよ」

「自分の言葉のセンス疑ってからにして」

「うっせぇ！」

彼女は多分可愛らしい顔をしているのに、性格がほぼ男だから接しやすい。

「じゃあさ、ジュース、買ってきて？」

私が甘えた声でそう言うと、べぇっと舌を出して立ち上がった。

「 Aの嫌いなりんごジュースね！」

「待って！それは勘弁！！」

悪戯に笑う紗綾の後ろ姿を追いかけて廊下に出ると、向こうから先生たちが歩いてきて、その少し手前で紗綾が立ち止まっていた。

「紗綾？」

私が呼びかけると紗綾は素早く振り返って小さく口の前に人差し指を押し当てた。

「なんかさ、言ってる」

確かに、なんか言ってるかも。

「明日来る転入生は、ーーーー」

耳を澄ましてみると学年主任が私の担任にそう話していた。

「転入生？」

こんな時期に？

転入生なら2ヶ月前の始業式が多いし、こんなパッとしない街のパッとしない高校に？

「 2年6組が1番生徒数少ないですからね。
まぁ厄介な生徒ではないと思いますけど宜しくお願いしますよ」

2年6組と言えば私たちがさっきまでいた教室。

つまり私たちのクラスだ。

こちらに近づいてくる先生たちに、盗み聞きしていたことをなんだかバレてはいけないような気がして、私たちは自販機の陰に隠れた。

「転入生って言ってたよね？」

「こんな時期に転入生って珍しくない？」

そう怪訝な顔をする紗綾は私と同じことを思っていたようだ。

「しかも私たちのクラスーーーー」

「イケメンかな～」

「まだ男子かも分からないでしょ～」

そう笑って私は目の前の自販機の中のカルピスを指差した。

「これがいい」

「うわ！1番高いやつ！」

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