第72話 カクの嘘 ページ30
カクと私は早速物資を海列車に運んだ。
物資と言っても諜報部員に頼まれていたものだったりで、つまるところお使いである。なんとも緩い仕事だった。
そのせいか、私の気も緩んでいた。
後のことを考えず、通りかかった見知った人物に声をかけてしまうまでには。
『あ、パウリー。』
｢ん？おぉ、Aじゃねェか。｣
｢…なんじゃ、知り合いか？｣
パウリーを知らないカクが私に尋ねた。
『この人はパウリー。1度造船場に…送って…。』
カクの顔を見てしまったと思った。
パウリーと関わったことを、カクには伝えていない。この顔を見るに、ルッチも伝えていない様子だ。
しかしそんなことは関係ないパウリーは、律儀に説明してしまう。
｢Aには借りがある。追われてる所助けて貰って、その上職場まで送ってもらった。いやァ、あん時は助かった！｣
ーーくう…気の良い奴め。
こんな日に限ってデニムを履いた自分を責める。せめてミニスカートだったらパウリーは自ら話の腰を折っただろうに。
｢…ほう。造船場が職場、のう。｣
カクがの光った目が私を見る。私は全力で目を逸らした。
ーー早くここから逃げたい。
私の思いとは裏腹にパウリーの話は続いた。
｢ん？長鼻。前に造船場に来たか？大工達が噂してたぜ、いい腕だって。あんた、うちに来るんだろ？｣
｢…あぁ。会社が経つ頃また顔を出す約束はしたが。｣
｢そうか！俺もだ。よろしく頼む！｣
パウリーは嬉しそうだが、カクはそれどころではないようだ。主に私のせいだが。
｢そんで…、お前ェらは？｣
ーー来た…。
私が恐れていた質問がパウリーの口から出る。
いい案が浮かばない私は咄嗟に答えようとする。
『…っと、き、きょうだ…』
｢ーー恋人同士じゃ。｣
私の言葉にかぶせてカクが言った言葉には驚いた。
『…ちがっ…。』
訂正したかったが、それをカクは許さなかったらしい。私ににっこり笑ったカクの顔は陰っていてすごく怖い。
｢…こ、いびと？｣
｢あぁ。こいつはわしの彼女じゃ。｣
｢！…そうか、そりゃ邪魔したな！｣
私だけでなく何故かパウリーも驚いた様子だったが、パウリーはすぐに表情を戻して笑った。
気のせいか、パウリーのその顔は少しぎこちなかった。
｢…すまんが、ちょっと急いでいてな！また頼む！｣
『…！ちょっ…。』
カクは私の手を握り早々とこの場を去ろうとする。
パウリーとこれ以上絡むのを嫌ったのだろう。
振り返るとパウリーは呆然と立っていた。
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アタル(プロフ) - サクラさん» サクラさん、ありがとうございます！コメントで感想を送ってくださると本当にやる気が出ます。自分で始めたので頑張るというのもなんか変な感じですが、頑張ります！ (2019年10月12日 17時) (
レス) id: e103d991e7 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ - カクもルッチもカッコいい…！毎回キュンキュンさせてもらってます！更新頑張ってください！ (2019年10月12日 16時) (レス) id: 2be65d96af (このIDを非表示/違反報告)
アタル(プロフ) - akane10746さん» 前回からコメントありがうございます！続けてみてくださっていてとても嬉しいです！頑張ります。 (2019年10月8日 13時) (レス) id: e103d991e7 (このIDを非表示/違反報告)
akane10746(プロフ) - 毎回面白いです!更新頑張ってください！！！ (2019年10月8日 9時) (レス) id: 38a8873821 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：アタル | 作成日時：2019年10月7日 0時
