完璧が邪魔をする【赤葦京治】 (ページ7)

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完璧少女.4 ページ7

「何かあったの？」

現在進行形で完璧と呼ばれている女の子には見えない北野さんに、とりあえずの質問を投げる。

すると、いつも口数が少なく敬語の彼女からは思いもよらない台詞が飛び出てきた。

「なんで誰も、誰も凡人なんかの努力を認めようとしないんでしょうか？
凡人だった私は秀才に成るために必要な努力を全て行ったのに…。
『天才』には成れなくても『秀才』にはなれると思ったのに。

そしたら、最も嫌いな『天才』って言葉で片付けられる…！
凡人ののしあがるまでの辛さを知らないくせして。上に行けば行くほど、自分が前を向いて歩いているのか、後ろを向いて歩いているのか、分からなくなる。アノ辛さを知らないくせして。」

彼女の本音に近いものを聞いた時、少なからず動揺してしまった。

普段、感情を表に出さない北野さんがこんなふうに思っているなんて考えたことも無かった。

反応に困っているのを察したのか、
「…すいません。」と彼女は謝った。

「こんな話されても困りますよね。どうか忘れてください。」

泣き止んでいた北野さんのぎこちない作り笑い。
なんだ、そんな顔できるんだ。

その顔と『忘れて』という言葉が重く重くのしかかる。

気づいたら、考えるより先に口が動いていた。

「話ならいつでも聞くよ。」

いつもの無表情でこちらを見てくる彼女の目は、心なしか輝いていた。

フワッと嬉しそうに目を細めて笑う。

「なら、今度は赤葦さんの話を聞かせてください。」

そう言って階段を降りていく彼女の背中を見送る。

しばらくして、俺は特別棟から去った。