星33個 ページ33
木刀同士がぶつかり合う音が、晴天の下で響いた。
弾かれた私は足でブレーキをかけ、体勢を低くして木刀に手をかける。時透さんに一瞬で間合いを詰められた。
追撃を間一髪で躱し、空気を肺に取り込む。
"星の呼吸参の型星々のさざめき"
右肩を狙って出した突き技。あと少しで届くと思った時、右手の甲に痛みがはしる。
あまりの痛さに木刀が手から滑り落ちる。
「勝負あり。」
目と鼻の先にある木刀。
それを認識して、降参の意味を伝えるために両手をあげた。
時透さんにお世話になってから数日。
鎹鴉によって伝えられる任務をこなしながら、お互いの訓練のために手合わせをする日々を送っていた。
今は、朝から行っている手合わせの合間の休憩時間。
縁側でお茶を飲みながら、今日の夕餉は何にするか考えていた。
一応、お世話になっている身なので何かすることはないか尋ねたら、「他の料理も食べてみたい。」と言われた。
それから食事を作っているんだけど、「美味しい」と言って食べてくれるから毎日頑張って作ろうと思えている。
「Aはさ、体術も混ぜた動きの方が滑らかだよね。」
"体術の方が得意なだけですよ。"
口を動すと、彼は何を言いたいのかわかったらしく、ほんの少しだけ優しく笑った。
突然の表情に驚いていると、彼は私の顔を覗き込む。
「今日の夕餉は、ふろふき大根がいいな。」
いつもより少し低く言われた言葉。
顔がぼっと火が出るように熱くなるのがわかった。今の表情を見られたくなくて、手で隠す。
"……善処します。"
私がそう言うと満足気に笑う彼を見て、きっと天然でやっているんだと自分に言い聞かせる。
その日の夕餉は、時透さんの要望通りにふろふき大根になった。
121人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
☆カペラ★ - こんばんは、これめっちゃ良い話ですね!ハマりました!!時透君カッコいい!!更新頑張ってください! (2020年1月14日 21時) (レス) id: 04526cdaa3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:コゲパンです。 | 作成日時:2019年9月7日 23時