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星32個 ページ32

お館様にカラちゃんを通じて許可をいただき、早速時透さんの任務に同行する。




竹林を歩くこと三十分。その間ずっと無言だった。鬼を倒す間も、そこから何故か彼の屋敷に引っ張られていく間も、一言すら生まれなかった。





彼はそんなに話すほうでは無いし、私は今声が出ない。だとしてもかなり気まずい。




甘露寺さんの言う通りなら、時透さんは私のことを嫌いではない。
でも、私自身好かれているとは思えなかった。






蝶屋敷で「おはよう」と言ってくれてから、ずっと目が合わない。
歩いている間も私の方を見ず、どんどん進んでいく。




ちょっとずつだけど、”寂しい”なんて思うようになっていた。普段はこんな事感じもしない。
もしかしたら、心が弱ったのかも。





前を歩く彼の背中を追いかけていると、彼の屋敷に着いた。





「入って。」






言われるがまま屋敷に入って、誘導されるがまま奥の部屋に通される。
家具の配置からして、おそらく客室だろう。






「この部屋、荷物とか置く時に使って。」





それから、厠やお風呂、台所などを案内されて部屋に戻された。





無いにも等しい量の荷物を片付けて、なんとなく正座でいた。
外は東の方の空が白んできて、もうすぐ朝なんだなと感じる。






その時、くぅーっとお腹がなった。
誰も聞いていないのに恥ずかしくなって、お腹をおさえる。
そういえば、しばらく何も食べていない。







音をたてないように襖を開けて、台所へ向かう。
一応、案内された時に食材は使っていいと言われていたし、少し早いけど朝食を作ってしまおう。







大根のみそ汁とご飯、それにだし巻き玉子を作っていると、時透さんが台所に入ってきた。




"食べる?"





そう聞くと、こくりと頷いてちゃぶ台のそばに座った。
おそらく彼のものであろう茶碗によそって、ちゃぶ台まで運ぶ。






私の分も運んでくると、時透さんは「いただきます。」と言って食べ始める。私も手を合わせてそうする。






久しぶりに作っただし巻き玉子は、少しだけ焦げていた。でも、不思議と苦くはなくて、むしろ美味しかった。






「……美味しい。」




その言葉が、時透さんの口から漏れる。
それを聞いて、何故だか心底嬉しくなって体温がほんのり上がった気がした。

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☆カペラ★ - こんばんは、これめっちゃ良い話ですね!ハマりました!!時透君カッコいい!!更新頑張ってください! (2020年1月14日 21時) (レス) id: 04526cdaa3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:コゲパンです。 | 作成日時:2019年9月7日 23時

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