星が鳴る【時透無一郎】 (ページ23)

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星23個ページ23

「お館様からの返事。ゆっくりしてきなさい、だそうだ。」

カラちゃんの声が耳元で静かに繰り返される。
数日前、機能回復訓練に合格した私はお館様に二日ほどの休暇を頂けないか確認していた。

目的は妹への近況報告だ。
竈門君と禰豆子ちゃんを見ていて、少し寂しくなってしまったのかもしれない。

私は荷物をまとめると、胡蝶さんたちに挨拶をして、蝶屋敷を去った。

休み無しで、日暮れまで歩き続けると私の故郷がある。少しばかり農業が盛んなこの村は、二年前と変わらず子ども達の笑い声で賑わっている。

＿＿＿懐かしいな。

もし会ってしまっても村の人を驚かせないように、刀を背中に隠す。
村に入ろうかとも思ったけど、どうせ私の家はもう無いから意味が無い。

くるりと踵を返して村の外れの墓地に向かう。

ひっそりと静まり返ったそこには、多くの墓石で埋まっていた。その中から、一本の桜の木の隣にある墓を探す。

誰かが定期的に掃除してくれているのだろう。一年ぶりの墓参りにも関わらず、墓石はピカピカと光沢を放っている。

線香をあげて、妹やその他の家族に最近のことを話す。強くなれたこと、それでも足りないこと、まだ敵を討てていないこと。
特に妹のアカネには謝ってばかりだった。

最後の最後まで辛い思いばかりさせたのに、二年経っても仇討ちの一つも果たせない不甲斐ない姉でごめん。

自分だけ生き残ってごめん。

女のものとは思えないほど硬い手。
きっとアカネとの約束すら守れないだろう。

じわっと涙が滲んで、視界がぼやける。
それを袖で拭う。力いっぱい拭い続けると、目の周りがヒリヒリと痛んだ。

今まで、後悔や罪悪感で泣いたり食べたものを吐いたりすることはあった。
でも、結局は受け入れて前を向き続けないといけない。

線香を消して立ち上がろうとした時、後ろから迫ってくる殺気を感じた。懐から短刀を抜き、迫ってきていた獣の爪のようなものを弾き飛ばす。

鬼だ。
夜になったから出てきたんだ。
頸を斬らないと。背中の刀に手をかけた時、木の影からこちらを見ている鬼が目に入った。

姿、顔立ち、それを認識した時、腸が煮えくり返りそうなほどの怒りが頭を支配した。

「お前は!!!」

踏み込んで頸を斬ろうとした時、地面が無くなった。私を中心に広がっている穴。
鼻の先すら見えなさそうな深い穴に私は落ちた。