星3つ ページ3
「すいません、お待たせしました。」
「大丈夫だ。」
冨岡さんは彼の屋敷の前で立って待っていた。
鎹鴉の指令が入ってからずっとそうやって待っていたのかもしれないと思うと、かなり申し訳ない。
「行くか。」
「そうしましょう。」
私たちは目的地に向かって歩き始めた。
鬼が出るのは夜。今回鬼が出ると噂の里は、このペースなら夕方には着くだろう。
さりげなく合わされている歩幅に、少し心臓の音がうるさくなった。
「Aは、柱になりたいと思わないのか?」
里まであと森を一個通るだけ。
そんな時に冨岡さんが爆弾をさらりと落とした。
自分の表情がピキィッと固まったのが分かる。
冨岡さんが何を言いたいのか、理解はしている。
__何故、自分の階級を”乙”と偽うのか。
彼は続けた。
「俺は、お前に十分な実力があると思う。皆、口に出さないが、お前を認めてはいる。」
彼の言葉を聞きながら、脳裏を掠めたのは夏の記憶だった。
人生史上最低最悪の日。
「……私には、そんな資格ないですから。」
なんとか声を絞り出すと、冨岡さんは「そうか。」とだけ言った。
彼は優しい。
断るとその話題には触れてこないし、気を使ってかこちらが話し始めるまで何も言わないでいてくれる。
そのおかげで、昔のことを深く思い出さずに済んだ。
「私、冨岡さんといるの嫌いじゃないです。」
「そうか、良かった。」
変わらない表情を見る。
拒絶されなかったことが嬉しかった。
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☆カペラ★ - こんばんは、これめっちゃ良い話ですね!ハマりました!!時透君カッコいい!!更新頑張ってください! (2020年1月14日 21時) (レス) id: 04526cdaa3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:コゲパンです。 | 作成日時:2019年9月7日 23時