星11個 ページ11
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「髪、ごめん。」
隠の人が神社に向かうのを見送った後、時透さんはその言葉を零した。
背中まであった髪は一部分だけ肩までの長さに切れていた。
「気にしてませんよ。正直、長い髪が鬱陶しかったので、手間が省けたくらいです。」
スゥッと風が吹く度に、首元が寒い。
社会的に女性の短髪が受け入れられていないこの時代で、どうやって髪を整えよう。
そんな事を考えながら山を下る。
知り合いに整えてもらうのが一番楽なんだろうけど、その人の所にこの頭で訪ねるのも気が引ける。
となると、自分の勘を信じて切るしかないのか。
「Aはその髪、どうやって整えるの?」
「それは今考え中です。」
「……僕がしようか?」
「え?」
間抜けな声が出た。
この人、髪整えられるの?もし失敗したら、かなり大変な事にならない?
グルグルと頭を回していると、時透さんの長髪に目が留まった。
「お願いします!!」
そこからは速かった。
長さは自分の裁量で決めていい事、坊主にならないならバッサリ切ってくれて構わない事を伝えて、彼に背を向ける。
時透さんは何処からか拝借してきた鋏で髪を断つ。
シャクシャクと髪が切れる音だけが静かな山に吸い込まれていた。
「こんな感じでどう?」
女の子だから持っておきなさいと、無理矢理持たされていた手鏡を懐から取り出す。
鏡に映っていたのが自分だと、自覚するのに時間が掛かった。
前下がりとでも言うのだろう、前に来るにつれて長くなる髪。一番長い部分でも肩にはつかないよう調節されている。
丁寧にも前髪も整えられていて、化粧もなにもしていないのに顔立ちが華やかになった気がする。
「すごい!!え、これ私ですよね。髪だけでもこんなに雰囲気変わるんですね!」
嬉しさは隠しきれなかった。
時透さんは「気に入ったならよかった。」と言って顔をそっぽ向ける。
ふわふわと毛先で遊んでいる時、男の子のことを思い出した。
「そう言えば、あの男の子はどうして鬼についてあんなに知ってたんですかね?」
そう聞くと、彼はありえないと言いたそうな表情。次の言葉で私は凍りついてしまった。
「だってあの子は、生きてる人じゃなかったから。」
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☆カペラ★ - こんばんは、これめっちゃ良い話ですね!ハマりました!!時透君カッコいい!!更新頑張ってください! (2020年1月14日 21時) (レス) id: 04526cdaa3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:コゲパンです。 | 作成日時:2019年9月7日 23時