タルトレット【宮侑】 (ページ6)

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タルト.6 ページ6

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「なぁ、お前何でそんなご機嫌なん？」

銀島の声が二年だけの部室で発せられた。放課後の部活が始まるおよそ十分前。

「関わらんほうがええで。昼の事がショックすぎて悲しい妄想に浸ってるだけやから。」

「サム、俺はそんな事せんで！」

そう言うと、サムから乾いた返事がくる。
「へーへー。」とも聞こえるような声に少しイラッとした。

「それで、何でそんなご機嫌なの？」

「よく聞いてくれた角名。俺は今日、Aに部活を見にこんか誘ったんや。」

「残ね～ん、断られましたってオチかいな？」

「サムは少し黙っとれ！……、普通に誘っても来る訳がない。やから俺は人質を連れてきたんや！」

制服のポッケを探って、例のブツを取り出す。手のひらにあるのは、マヌケな顔のハリネズミマスコット。

「あ、俺があげたやつだ。」と角名が呟く。

「アイツはハリネズミ愛好家やから、取り戻すために絶対くるで！」

「そしてツムは更に嫌われました。」

「エ！？」

驚きの声をあげると、バカじゃないのかと言いたげな視線が送られた。
全員着替えが済んだから、部室を出る。

「え、チョ、何で俺がもっと嫌われるん？」

「Aは、そういうのがイジワルやって言ったんやろ。このドアホ。」

ツムはそのまま先にフロアに入った。それに銀島も続く。
俺らもフロアに入った。

「ねぇ、侑。」

「何や角名。」

「侑はどうしてそんなにAにこだわるの？」

その質問に少し詰まる。
理由は説明するのは簡単やった。でも、それは角名が知らん小・中学校の頃の話や。

どうせなら、トクベツってことにしときたい。

「秘密や秘密。大人には秘密が付き物やで。」

「昨日人のプリン食ったやつが何言っとるん。」

サムの嫌味を華麗にかわしてシューズの紐を結び直す。
顔をあげたら、二階で不機嫌そうにフロアを見ているAを見つけた。

マスコット関係で好感度はほんのすこ～し下がったかもしれん。
でも、俺がかっこよくバレーしてるとこ見したら好感度うなぎ登り。応援してくれる可能性だって出てくる。

もしかしたら、『名前呼び&くん付け』もしてもらえるかも。

そんな考えに浸っていると、Aが俺のことを見つけた。
さっきまでの表情が一変、鬼のような形相になる。

アカン、本気で怒らせてしもうた。
この時ばかりは、俺の鋼のハートも砕け散りそうになった。