タルトレット【宮侑】 (ページ34)

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タルトレット.34 ページ34

「冬休み、何するん？」

「う～ん、早寝早起き朝ごはん、かな。」

「おっ、珍しくボケたな。でも、お前本当にやりそうやな、それ。」

「早寝は確実だけど、早起きは怪しい。99.9%の確率で失敗する。」

「ほぼ失敗しとるやん。」

侑くんが笑うと、口から真っ白な息が吐き出される。繋いだ手は、部活終わりだからなのかとても温かい。

冬休み。たぶん私はいつも通り勉強して、こたつで蜜柑食べて、体重計に怯えるのかな。

今年の年越しは何を見ようか。
と言っても、その時間まで起きていられたことが無い。毎年計画倒れだ。

「侑くんは冬休み、やっぱり部活？」

「おん。IHは負けたからな、春高は優勝すんねん。」

自信満々にそう言う彼は有言実行。現実にしてしまいそうで、柄にもなくワクワクした。

マフラーに鼻まで埋めて「ふふふ」と笑う。
雪はちろちろと空から降っていて、この調子なら明日はうっすらと積もるだろう。

「そういえば、今日北先輩を見ても胸があまり苦しくなかったよ。」

「……、そうか。立ち直れたんやな。」

「最近じゃ、本当に好きだったのか疑うくらい。もしかしたら、元から恋愛に向いてなかったのかも。」

左手を空に向けて見る。今日は視えない日。
恋をするというのは楽しいと聞いたけど、上手くいかなかったら苦しいだけだ。

「ところで、侑くんは角名くんに彼女がいたこと知ってた？」

「かなり前からおったで。たしか、夏くらいかな……。」

「半年であの境地に至るのか…。」

今度噂の『彼女ちゃん』に話を聞いてみようか。
いや、でも何を聞くの？『円満の秘訣は何ですか？』とか、相手を怖がらせるよ。

「Aはさ、今恋人欲しいとか思わ無いん？」

「今はいいかな。恋はしばらくお休みするよ。」

侑くんは少し考える仕草を見せた。そして、いつもより真面目な顔で私を見る。

「俺が好きな子に告白したら、どうなると思う？」

「上手く言えないけど、それが侑くんの全力ならちゃんと伝わりはするんじゃない？成功するかどうかは別でさ。」

ギュッとポケットの中の手が握られる。

「わかった。冬休み終わったら、その子に告白するで！！」

「ガンバレー。」

そこまで話終えるとちょうど私の家の前だったので、お礼だけ言って別れた。