タルトレット【宮侑】 (ページ30)

今日:6 hit、昨日:0 hit、合計:9,244 hit

タルトレット.30 ページ30

しっかり寝たからか気分も優れていて、教師への説明も思った以上にスムーズに進んだ。

相手は素直に嫌がらせの件を含め謝ってくれた。だったら最初からやるなという話だけど、面倒だったから言うのを止めた。

そして、今は教室で机の中のものを片付けている。いくらスムーズに進んだからといって、時間が止まっていた訳じゃあない。
もう外はとっぷりと暮れ、部活動生の挨拶も終わっている。

全ての荷物をまとめて教室を出ようとすると、前に佐伯さんが立っていた。

「ねぇ、一つ聞きたいことがあるんだけど。」

「はぁ…、何？」

有無を言わさない物腰にそう返すと、眉間にグググッと皺を寄せて口を開いた。

「アンタ、侑くんと付き合ってんの？」

「はあ！？」

突拍子も無い質問。思わず間抜けな声が漏れる。
私が侑くんと？無い無い。

「誰かと付き合ったことすら無いけど……。」

「はあ！！？アンタバカじゃないの？」

「いや、ちょっと意味わからないし、何で説教みたいになってるの！？」

「さすがに侑くんが可哀想だから。」

あのゴーイングマイウェイ男のどこが可哀想なんだ。私には理解しかねる。
頭に疑問符を浮かべていると、また彼女は口を開いた。

「呆れた。あんだけ好きオーラ出されてて気づかないバカがいるなんて……。」

「すきおーら？」

「そうよ。アンタといるときの侑くんの周りに、『幸せ』って感じのオーラと『今誰も話しかけてくんなよ』オーラしか漂ってないんだから！！」

それが何で好きに繋がるんだろう。
私が北先輩のこと好きだった時、『話しかけてくんな』なんて思わなかった……気がする。

「ああ、もうこのおたんちん！だから、侑くんはアンタといるとき、普通絶対見せない顔してんの！！」

「……、それは初耳やったな。」

声のした方を向くと、侑くんがドアにもたれかかっていた。何カッコつけてんだコイツ。

「A帰るで。」

「え、あうん。じゃあね、佐伯さん。」

「また明日。」

学校を後にすると、侑くんが口を開いた。

「何で佐伯と一緒におんねん。」

「……、成り行き？でも、話した限り悪い人じゃないよ。」

そう言うと、彼はブツブツと小言を言い出した。

ふと佐伯さんの言葉を思い出す。
『普通絶対見せない顔』か。

いつもと変わらないように見えるけど。