タルトレット【宮侑】 (ページ27)

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タルト.27 ページ27

上に向けていた携帯を放り投げて、俺は一目散に駆け出した。

何がなんでも、絶対に間に合わせる。
目の前で好きな女が死にそうなときは、死ぬ気で助けな。

地面を蹴る足、激しく鼓動する心臓、手を伸ばせば届きそうな距離なのに、もしものことが頭をよぎる。

Aの笑顔が頭にちらつく。
この顔だけを思い出して、悲しみ続けるなんて未来、クソったれや！！

地面と頭までの距離僅か一メートル。
抱き止めることができないことを察して、スライディングをするみたいに体を滑らせた。

＿＿＿ドスッ！！
人一人落ちた時の衝撃が体を巡る。

瞬間的に瞑っていた目を開く。
Aは静かに呼吸して、俺の上に乗っていた。

傷は無い。
たぶん、気絶してるだけ。

ブワッ！と、胸いっぱいに新しい酸素が送り込まれて、ようやく働きだした脳は喜んでいた。

目頭がジンと熱くなる。
泣いたらアカン。今泣いたら、絶対止まらん。

とりあえず、保健室に運ばんと。
丁寧に、乱暴に扱ってしまったら壊れてくまいそうな彼女を抱きかかえる。

途中、Aの手の中にあるものが見えた。
サムと出しあって買った誕生日プレゼントやった。

「アホ……。」

不意打ちにまた泣きそうになる。

放り投げた携帯を拾って録画停止を押す。それをポッケに入れて、保健室に歩きだした。