タルト.18 ページ18
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Aが俺の前で泣くのは二回目やった。
初めては小学校一年の頃、たぶん彼女は覚えとらん。
「変なモノが見える目」と囃されても絶対泣かんかった彼女は、友達のために初めて泣いて怒った。
体が弱いその子を、体が一番でかいやつが「サボりだ。ずるい、卑怯やん。」と言ったかららしい。
気づいたら彼の頬に拳が飛んでいた。
「ふざけんじゃねェ!!」って普段では考えられない口調で怒る彼女は、どこかかっこよかった。
どっちが殴られてるのかわからないくらい泣いていて、周りは自然とAを応援しとった。
以来、彼女はいつだってひっそりと独りでいた。遠足も、修学旅行も、体育大会も。
まるでそうあることが当たり前のような雰囲気で、独りで勉強して知識を増やしていった。
だから、もしかしたら今日、教室でひたすら問題集を開いてシャーペンをカチカチ鳴らしとるんやろうな。
錆びた下駄箱を覗いて、廊下を歩く。
教室のドアを開けてすぐの席を見ると、案の定彼女は数字がびっちり書き込まれた問題集とにらめっこ。
「おはようさん。」
「あぁ、侑くん?おはよう。」
「今日はいつになくヤバいの開いとんな。」
「ヤバくはないよ。ただ、少し時間が掛かるだけ。」
サラッと耳に掛けられる髪の毛。
顔を見してくれんのはまだ泣き跡が残っとるから、だと思いたい。
「ところでAサン。宿題写さしてくれん?」
「……、今回はちゃんとやって来たんでしょ?」
肩が跳びはねるのがわかった。
え、もしかして気づかれとった?
心臓はバクバク、冷や汗はダラダラで次の返事を待つ。
「治くんから昨日、謎の写真が送られてきました〜。なんと、コチラ!」
そう言うと、呪われた人形みたいにギ、ギギギと首だけ回して後ろを向く彼女。
心臓止まりそうなくらいの迫力の側に、携帯の画面がある。
写真は確実に俺の部屋やったし、写っとるのも俺やった。
「え、いや、写真持ってる事実より、今この状況じたいが怖い。」
「オバケ怖いの?」
「怖くはないんよ。ただちょっと苦手ってだけや。」
Aはイタズラ思い付いたワルガキみたいな顔して、前を向いた。
なんや、心配して損した。
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ぬーすけ(プロフ) - 初コメ失礼します。更新順で巡ってたら、惹かれる作品に出会いました。宮くんが可愛いです。更新大変だとは思いますが頑張ってください(*^^*) (2019年1月27日 1時) (レス) id: af92ea114b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:コゲパンです。 | 作成日時:2018年12月24日 14時