キミとの距離

ふたりの食卓に希望 ページ17

Aの色恋沙汰を応援するつもりはないが、興味はあった。
こいつのことだからか、チームメイトの金城のことだからかわかんねぇけど。
高校のあいつは知らねぇが、今は同じ大学に通っているのでボチボチあいつのことは知ってるつもりだ。
金城は大学で意外とモテている。
それは東堂や新開のような黄色い歓声が飛ぶことはほとんどないが、淑やかにモテているのだ。
影で「金城くんだ…」と好意を示した目をしている女を何人も見たことがある。
それでもオレの知る限りは女っ気はねぇ。
あいつも大概、自転車バカなのか。
それともこいつがいるから他の女なんざどーでもいいってか。

「私、真護くんのこと好きなんて言ってないんだけど…」

Aは至って普通を装い、再び手を動かし始めた。

「ハッ、あんな反応されたら誰だってわかんだろ」

そういうものなのかな…と呟きながらAが持ってきたのはサラダだ。
それを2人分、別の器に入れて持ってきた。
オレの質問には答えず、黙々と手を動かすAをじっと見ていると、唐揚げを揚げる油の音がした。
とたんに腹が減ってくる。

しばらくして唐揚げを持ってAがやって来る。
茶碗に飯を盛り、味噌汁をよそっていた。

やっとテーブルにつき、飯を食う。

「いただきまァす」

オレは迷わず唐揚げに手をつけた。
口の中でモグモグ噛んでいると、Aは箸をつけずにオレをずっと見ている。

「……まじィ」

「えっうそ!?」

「ウソ。うめぇヨ」

お世辞なく、唐揚げは美味かった。

「あの…靖友くん。真護くんは大学でどんな感じ??」

「…つーか、オレの質問の方が先じゃナァイ??」

Aはビクッと身体を震わせた。

「……でもどこがって言われてもわからないの。私に対しての真護くんが好きだから」

わかっていたとはいえ、直接聞くと効果はバツグンだった。
オレの中の何かが崩れていくような感覚。
オレはいつの間にか挟んでいた唐揚げをテーブルに落としていて、箸で突き刺して口に放った。

「でも真護くんは私のこと好きじゃないから」

「……あ??」

Aが目を伏せて言う。
好きじゃないって、片想いっつーことかァ??
付き合ってはいないという事実が、オレの中にまだ希望があることを告げてくる。

それから金城のことをオレが知ってる限り教えてやった。
今もチャリやってて高校のときよりも速くなってること、意外とモテているが興味を示さないことなどなど。
飯を食いながら、こいつの質問には答えてやった。

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