愛 ―15― ページ10
それはインターハイの前日。
「A、オレが山岳を獲ったらAの時間をくれないか」
私は瞬きしながら尽八さんを見る。
「2日目の夜、少しおまえとすごしたいのだが」
「…わかりました。必ず獲ってくださいね」
「ああ、必ず」
尽八さんは私の頭を撫でた。
荒北先輩とは違う、繊細な手つき。
そして尽八さんは総北の巻島さんとの勝負に勝って山岳リザルトを獲り、今に至る。
あたしの目の前にいる荒北先輩は、すごい形相で睨んでいる。
睨まれても困るんだけど。
再び尽八さんたちの方を見てからテントへ戻ろうとすると、肩を荒北先輩に掴まれた。
「…行くなヨ」
「…そんなこと言ったってあたしが行くってわかってるでしょ」
「わかってっから言ってんだろ」
「無理。それに、尽八さんと許婚として接する最後かもしれないから。あたしは行くよ」
先輩は大きく舌打ちして、頭をガリガリ掻いた。
「ったく、好きにしろ」
気に入らないんだろうけど、最後という言葉に諦めてくれたようだ。
あんたも見かけによらず、お人好しだよな。
言い合いながらも、先輩は尽八さんのことだって考えてんだ。
「…で、東堂とはどこ行くんだヨ」
「決めてないけど、たぶん外。散歩でも行くんじゃない??」
「んじゃァ、今ちょっと来い」
あたしは先輩に手を引かれた。
どこに行くのかと思ったらテントの中。
1位を獲ったことで、全員が外に出て喜びムードだからか、誰もいなかった。
「いったい何??」
あたしがそう言うと、先輩はテントの入口を閉めた。
「何なの…っ!?」
先輩はあたしの身体を引き寄せると、かまわずキスをしてきた。
こんなとこでバカじゃない!?って言いたくても、先輩の唇で塞がれていて言葉を発せられなかった。
しばらくして唇が離れると、先輩は満足そうに口角を上げていた。
その顔をされると、何も言えなくなる。
「…ここに痕付けてもいいかァ??」
先輩はあたしの首筋を人差し指でなぞる。
「はぁ??なんで」
「虫除けェ」
「バカ」
あたしは先輩の手を払い落とした。
「あんたも尽八さんも虫除け、虫除けって…。バッカみたい」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 70人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
poipoiaya(プロフ) - 桜朱さん» えええっ！そんなお言葉をいただけるとは…！ありがとうございます！またキュンキュンできるよう頑張ります！ (2018年3月23日 18時) (
レス) id: bc50c192a8 (このIDを非表示/違反報告)
桜朱(プロフ) - 最高でした！神作品です！こんないい作品をありがとうございました。物凄くキュンキュンしました！！ (2018年3月21日 21時) (レス) id: 6f7a2e4a1d (このIDを非表示/違反報告)
poipoiaya(プロフ) - ひかるさん» コメントありがとうございます!!待宮セーフですか!?よかったです。。なんだかんだ番外編書くの楽しいのでこちらこそありがとうございます!!もう少し番外編ありますのでよろしくお願いします♪ (2017年10月29日 15時) (レス) id: 48d81e0108 (このIDを非表示/違反報告)
ひかる(プロフ) - 執筆お疲れ様です^^そして、番外編までありがとうございます^^待宮のキャラはだいたいそんな感じで大丈夫だと思います^^ほんと、無理を言ってしまって申し訳ないです^^;楽しく読まさせていただいてます♪無理をせずに頑張って下さい^^ (2017年10月28日 21時) (レス) id: 3d465a31eb (このIDを非表示/違反報告)
poipoiaya(プロフ) - ひかるさん» かしこまりました!!金城はともかく待宮の口調が書けるかビビってますが、大学生の荒北と絡めたり荒北と夢主との絡みを書きたいと思います。これからもよろしくお願いします!! (2017年10月20日 9時) (レス) id: 48d81e0108 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：唖耶 | 作成日時：2017年9月28日 8時
