愛は絆よりも奇なり

絆 ―41― 荒北side ページ42

好きな女が横にいんのに、なんもしねぇなんてオレにはできねぇな。
オレは自分の感情のままに手を繋いだ。
そのときはそれ以上するつもりはなかった。
このまま寝ようと思ってたんだ。

なのにAチャンがムカつくことを言った。
それ以上喋れねぇようにするために、こいつに跨って手で口を塞ぐ。
Aチャンは大きな目をさらに真ん丸にしていた。
オレが上にいる状況を理解すると、恥ずかしさもあってか頬を朱に染める。

そういうとこもオレを煽るだけだとわかってんのかねぇ、こいつは。
ま、こういうことに慣れてねぇんだろうが。
つーか、オレもこんなこと初めてだしィ??

そんでうるせー口を塞いでやった。
唇を離すと、戸惑いを隠せないように少し伏せ気味の彼女の目。
それによって目立つ長い睫毛。
そのすぐ下には先程よりも赤みを増した頬。

オレは自分の身体の奥の声をそのままこいつに吐き出した。
好きだと。
早くオレのモノになれと。

「………は、い」

……は??
今「はい」っつったかァ??
それって、オレのモノになるっつーことか??

その瞬間、東堂が寝返りをうつ。
Aチャンはそれにビクッとして、東堂に目をやった。

「悪い、やっぱなし」

Aチャンは両手で自分の顔を隠した。

ハァ!?ぬか喜びかヨ!!

「オィ、ちょっと外出んぞ」

Aチャンの手を引っ張る。

「ちょっと!!」

「うっせぇっつの」

東堂が起きないか覗き込んだが、起きる様子はないのでそのままAチャンを部屋の外へ連れ出した。


ソファやテーブルのある雑談室のようなところにやって来る。

「おめー、さっきオレのモノになれっつったとき、はいっつったよなァ??」

「…だからやっぱなしって言ったじゃん」

「ンでだよ」

「あれは!!…その場の流れというか……とにかく、あたしは尽八さんを裏切れない」

「…ンじゃあオレのこと、好きか嫌いかどっちだ」

「……わ、かんない。…でも、これだけはわかる。あたしは、尽八さん以外を好きになっちゃいけない」

「東堂にはオレが話す。だからオレと付き合えヨ」

Aチャンはゆっくり首を横に振った。

「これはあたしと尽八さんだけの問題じゃない。悪いけど、あたしはやめて」

Aチャンはオレを置いてそこから去った。
去る間際に見せた、少し寂しそうにオレを見る目がオレの脳裏に焼き付いていた。

あいつは許婚ってのに縛られてるだけだろ。

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