愛は絆よりも奇なり

絆 ―39― 荒北side ページ40

東堂がAチャンと一緒に寝ると言い出した。
隣に寝るだけだっつっても何があるかわかんねぇし、何よりイラつく。

東堂がAチャンの手を掴んで立ち上がる。

てめーの好きにはさせねぇヨ。

オレがもう片方の手を掴んだので、Aチャンも東堂も1歩後ろに下がった。

「何をしている、荒北」

2人がオレに振り返った。

「……オレも行く」

ぼそっとそう呟いた。

オレがそう言うと、また東堂と言い合いながらAチャンの左手を東堂が、右手をオレが掴んで施設の方へ引っ張っていく。

「え、あの、…では2人ともご自身の部屋で寝てはいかがですか??」

「それはない!!「ねェ!!」

Aチャンはあわよくば両方とも自分の部屋で寝てほしいと思ってんだろう。

オレたちは部屋から自分の布団を持ち出して、Aチャンの部屋に行った。
部屋を出るときに、真波が「布団持ってどこ行くんですかー??」と言ってたが、無視してやった。

Aチャンの部屋に入って布団を敷く。

「Aはオレの隣だ!!」

「何勝手に決めてんだてめー!!」

また言い合いになり、結局Aチャンを真ん中にして左からオレ、Aチャン、東堂と並んだ。

明日は朝、軽く走って午前中に出発する予定だ。

「おやすみなさい、尽八さん、荒北先輩」

「おやすみ、A」

「オヤスミィ」

それぞれが自分の布団に入って目を閉じた。
それから20分くらいした頃、東堂とAチャンが眠っていることを確認する。

「ハッ」

もぞもぞとAチャンの布団の方に手を伸ばす。
ツンと何かに触れた。
それが彼女の手だと確信すると、そのままギュッと握る。
すると、Aチャンの身体がビクッと反応し、ゆっくり目を開いた。
そしてオレと目が合う。
Aチャンはオレをひと睨みすると、布団の中でオレの手を振り解こうと自分の腕を動かしていた。
オレは逃がさねぇというように、さらに強く握る。

「あんた、何してんの??」

「手ェ繋いでんだヨ」

「手、出さないんじゃなかったの??」

「それは東堂が言ったんだろォ。オレは言ってねぇ」

「…でも離せ」

「イヤだネ」

Aチャンは東堂側に身体を寄せる。

「ここ空いてっと、侵入しちゃうぜ??」

オレ側の彼女の布団が空いたところを、手を握ってない方でトントンと叩く。

「はぁ!?」

「バァカ。東堂起きんだろうが」

Aチャンは大人しく布団の真ん中に戻ってきた。

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