愛は絆よりも奇なり

絆 ―28― 荒北side ページ29

あー、言っちまった。

オレは寮に戻ってきてベッドにダイブした。

あいつには東堂がいて、オレの負けなんて目に見えているのに手に入れなきゃ気が済まない。

これがオレの性分なんだ。

つーかオレ、あんな女のことが気になってたのかヨ。
ぜってーめんどくせぇ女だぜ、あいつ。

おそらくあいつと東堂のキスを目の当たりにして、スイッチが入っちまった。
だが、後悔はねぇ。

オレのことが好きか嫌いかは置いといて、あいつは東堂が好きだからオレと付き合えねぇっつったわけじゃない。
東堂との結婚が決まっているから付き合えねぇんだ。

ぶち壊してやろうじゃねぇのォ。






朝が来て、オレは再び学校にいた。
あいつはオレを避けるか、まずは確認だ。
自主練終わりに福チャンに会うと、Aのところに行くと言っていた。
それは合宿についてのプリントらしい。
福チャンに、オレが行ってやると言うと少し不思議そうにしていたが、なら頼むと渡された。

1年の廊下を歩く。

「Aチャン」

自分の席に静かに座っていたAチャンに声をかける。
進展した記念に福チャンと同じような呼び方をしてみると、彼女はゆっくり顔を上げた。

「…どうしました??荒北先輩」

お嬢様モードの笑顔でオレを見る。

「…合宿の日程表だ」

「それは、ありがとうございます」

Aチャンの前にヒラヒラと差し出した紙に彼女は手を伸ばした。
オレはAが紙に触る瞬間に、自分の腕を挙げると彼女の手は空を切った。

その一瞬、もう一方のAチャンに睨まれる。

「……私のではないのですか??」

「…ハッ、おめーのだヨ」

オレは紙を机に置いた。

「おまえ、昨日のことなんとも思ってねぇのォ??」

「…獣に噛み付かれた程度に思っております」

Aチャンは日程表を綺麗に4つ折りにし、机の中にしまった。

「ヘェ…もっかい噛み付いてもいいかァ??」

オレはAチャンの輪郭をなぞるよう顎に触れる。

「ふふっ、ご冗談を。貴方は私を好いていないでしょう??ただのお遊び感覚ならやめてください」

Aチャンはオレの手を払い除ける。

こいつにオレの気持ちは通じてねぇようだ。
オレだって冗談だったらどんだけよかったか。
まずはあいつに自覚させることから始めねぇとなァ。
…んでオレ、こんなに必死になってんだ。
バカみてェ。
けど、こんなオレは嫌いじゃねぇヨ。

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