絆 ―18― 東堂side ページ19
10分程度でAが更衣室から出てきたので、オレ、荒北、新開も入れ替わりで着替える。
「尽八、Aさんのこと送ってくんだろ??」
「ああ」
「チャリここに置いてけヨ、東堂」
「なぜだ??Aを送った後、自転車で寮まで帰ってくるつもりなのだが」
「いいからァ」
荒北はこっちに顔も向けず、黙々と着替えながら言った。
荒北がなぜそんなことを言うのかわからん。
だが、こいつがそういうことを言うのは珍しい。
荒北は色恋沙汰には突っ込んでこない主義だからな。
「ふむ、仕方あるまい」
ま、たまには奴の言うことを聞いてみるか。
そういう風に納得した。
更衣室を出ると、窓から外を見ながらオレたちを待っているAが見えた。
その横顔は憂いを帯びているようで、美しい。
「A、待たせたな」
Aはオレたちに向き直り、大丈夫だと笑っていた。
校門までは4人で歩く。
校門からはAの家と寮は逆方向なので、そこでこいつらと別れることになるだろう。
「A、そう言えば正式に結納の日取りを決めねばいかんな」
「そうですね、でもインターハイが終わった秋頃でよろしいんじゃないでしょうか」
「すまないな、気をつかわせて」
「いいえ、尽八さんにとって大事な大会ですから」
オレたちの会話に、新開はパワーバーを咥えながら驚いたように目をぱちくりさせていて、荒北は聞いているのかいないのかそっぽを向いたままガニ股気味で歩く。
「結納か。本当に結婚するんだって感じだな。式には呼んでくれよ」
「もちろんだ!!荒北も呼ぶからな!!」
「あーヘイヘイ。ご勝手にィ」
「では荒北先輩、新開先輩、今日はお手伝いいただいてありがとうございました。また明日お会いしましょう」
「ああ、またな。仲良く帰れよ」
新開は返事をしていたが、荒北は何も言わず、更にこちらも見ないでズカズカ寮の方へ歩いていった。
そんな荒北を新開は足早に追って行った。
それを見送った後、オレたちも帰路につく。
学校から出てから数分、Aが何かを考えていることに気づく。
どうした、と声をかける前にAの口が開いた。
「あの、尽八さん…手を、繋ぎたいのですが…」
彼女から発せられた言葉に、オレは驚きを隠せなかった。
「…ああ、繋ごうではないか」
オレはAの手を固く握る。
それに彼女も応えるように握り返してきた。
こうするのは何年ぶりだろうか。記憶にあまり残っていないほどだ。
だが不思議と安心する。
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poipoiaya(プロフ) - ひかるさん» コメントありがとうございます!!宣戦布告しちゃいましたー!!東堂から奪いにいきますよー☆これからもよろしくお願いします!! (2017年9月14日 9時) (レス) id: 48d81e0108 (このIDを非表示/違反報告)
ひかる(プロフ) - 執筆お疲れ様です^^あー、戦線布告キターとテンション上がりましたw今後の展開がますます楽しみです^^ (2017年9月14日 1時) (レス) id: 3d465a31eb (このIDを非表示/違反報告)
poipoiaya(プロフ) - ひかるさん» 毎度読んでいただきありがとうございます!!荒北のキャラ崩壊してませんか!?心配だったのでよかったです♪やっと荒北との恋愛が始まります!!ここまで長かった(笑)これからもお付き合いいただければ嬉しいです!! (2017年9月3日 10時) (レス) id: 48d81e0108 (このIDを非表示/違反報告)
ひかる(プロフ) - こんばんは♪更新の通知を見るたびに楽しみに、読みに来てます♪極度の靖友不足だったので26話で3割程回復しました^^;今後の展開も楽しみにしてます♪更新頑張ってください♪ (2017年9月3日 2時) (レス) id: 3d465a31eb (このIDを非表示/違反報告)
poipoiaya(プロフ) - ひかるさん» 新作の方も読んでいただいてありがとうございます♪自分でも荒北とどう絡めていこうか行き当たりばったりですが、楽しめるよう頑張っていきますのでよろしくお願いします!! (2017年8月9日 8時) (レス) id: 48d81e0108 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:唖耶 | 作成日時:2017年8月7日 14時